「平成22年7月広島県庄原市で発生した土砂災害に関する4学会合同現地調査報告会」を聴きに東京まで行ってきた。場所は四谷駅前の外濠公園内にある(社)土木学会の講堂である。無料だった。
この夏、7月16日広島県庄原市北部の川北町,西城町を結ぶ県道445号線地域に集中豪雨で土砂災害が起きた(死者1名全壊家屋12棟半壊家屋11棟)。山間部の約4km四方の狭い範囲を限定した突然の集中豪雨が特徴的であり、洪水と37箇所もの土石流(斜面崩壊は200箇所以上といわれる)がほぼ同時に発生した。砂防学会,地盤工学会,土木学会,日本地すべり学会が合同調査団を結成し広島県の協力を得て現地調査を実施。本報告会はこれまでの調査結果を速報である。
▼以下、プログラム
開催の挨拶 (土木学会:古木守靖 専務理事)
14:35~14:55 土田 孝(広島大学)災害の概要
14:55~15:15 海堀正博(広島大学)調査で見られた水の噴き出し跡から考えたこと
15:15~15:35 中井真司(復建調査設計(株))被害をもたらした降雨と災害地の地質の特徴
15:35~15:55 福岡 浩(京都大学)源頭部崩壊とメカニズム
15:55~16:15 小川紀一朗(アジア航測(株))航空レーザ計測による土砂移動状況
16:15~16:30 質疑応答
この土砂災害にはちょっと注目していた。ポイントは広島に多い花崗岩風化土質(通称マサ土)ではない比較的固い地盤で起きていること。また、人工林地だけでなく広葉樹でも同じような崩壊が起きていること。というわけでノートをとりながらプログラムを最初から最後まで聴いた。
スライドを見ながら(なぜか人工林地の被害箇所の写真は素早く流してしまう。意図的なのか?)。
この箇所は人工林にも見えるが、説明によれば若齢広葉樹だそうだ。
こちらはわりと大きな広葉樹林。中には樹高20mの木もあったという。
わずか4~5km四方という限定された場所に1時間100mmという豪雨が降った。一山離れた場所はほんのパラパラの雨。異様としか言いようのない夕立状の雨。当時、遠くから撮影した現地の水柱。凄い。
固い岩層に黒ボクという火山性土壌が載った地質だった。黒ボクは基本的に粘土のように固いが、腐食質が混じった黒色の土である。地層の境界に穴ぼこが空いて、そこから水が吹き出していたそうだ。
その下の基岩は流紋岩という硬いものだが、亀裂が多いという。また、断層もあって破砕帯もある。地下に水道(みずみち)が走りやすい地層と言える。
まさ土の崩壊はU時にえぐれて崩壊土に大きな岩が混じるのが通例だが、今回は1m~1.5m程度の表層崩壊がほとんどであったという。
しかし、実生の広葉樹で樹高が20mもあれば、根系は少なくとも5mくらいの直根がありそうだが。それと「表層崩壊がほとんど」というのは矛盾しないだろうか? よほど基岩が硬くて、黒ボクのところに根が集中し、豪雨によってその層が内側からはがされ(ちょうど市街地の豪雨災害のとき、マンホールの蓋が持ち上がるように)根ごと持ち上がってしまったのでは? という見解のようであった。
森林総研の所員も来ていたが、声が小さくてボソボソで何を質問したのか聞き取れなかった。
雨をともなう表層崩壊には、樹木の根系の状態が非常に重要な要素だと思うが、この調査団の中に林業の研究者はいない。唯一、広島大の海堀氏が総合科学研究科環境科学部門環境自然科学講座准教授 ということで土砂災害と森林に関係している。崩壊地の人工林率や林齢を知りたかったが、その話はなかった。
印象としては、「人工林だから災害があるわけじゃないよ」「だから土木構造物が必要だよ」という感じが受け取られた。まあ土木学会だからな。