囲炉裏暖炉の自在カギを作る


小さな三つ爪五徳を灰の上に設置して、そこにヤカンをかけ、燠炭ではなく小さな枝を燃して、水からお湯を沸かしてみた。沸くのにかなり時間がかかるが・・・

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やはり、薪で沸かしたお湯はコーヒーやお茶が旨いのである。これまではガス台でいったん沸かしたものを、囲炉裏暖炉に運んで燠炭で保温して使っていたりしたのだが、なんとか自在カギが作れないかな、と思った。

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自在カギについては暖炉の設計の段階からかなりの検討を重ねたが、断念したままであった。

水を満たした鉄瓶と自在カギの組み合わせは重量もあり、しっかりした支点が必要となる。

万一、自在や支点が破損し、湯がこぼれた場合、暖炉の底の石を割ってしまう危険が大きい。石の暖炉に水濡れは厳禁なのだ。

西洋の暖炉には日本の自在カギのような形態のものはないが、鎖とフックを使用してヤカンをかけたり、古い時代の暖炉にはクレーンというものがあって、側壁の支点をとった可動式の片持ち梁で鍋を吊るしたりしている(下2点のイラスト、拙著『囲炉裏と薪火暮らしの本』より)。

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私も最初はそれを参考にして設計してみたが、この囲炉裏暖炉は側壁がないのでクレーンが付けにくい。また、鷲ノ山石は凝灰岩なのでそれほど硬くない。片持ち梁の支点をとるには心もとないのである。

ともあれ石がむき出しの暖炉ではなく、灰スペースがある囲炉裏暖炉になったのだから、水濡れによる破損の危険は大幅に減じた。また、ヤカンは重い鉄瓶ではなく、軽いアルミやステンレスを使えばよい。

フードに穴をあけ、鉄棒を渡してそこから小さな自在を吊るそうか? 放射状に4本のワイヤーを束ねてぶら下げたらどうか?

などと考えているうちに、ふとダンパーの開閉フックを思い出した。ここにワイヤーを掛け、1本で直接吊ってしまうのだ。さっそく試してみた。

ダンパーは後部に重りを付けたスライド式なので、全開にしていれば支点の強度としては申し分ない(下写真赤矢印)。が、吊り位置としてはヤカンが前に出過ぎてしまうので、細いステンレス線で石側に引っ張ることにした。

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真鍮の針金にステンレスの鎖を取り付け、フックはヤカン側に付ける。市販のヤカンは吊り下げることを前提として作られていないので、バランスのいい位置に、銅線でヒートンを付ける。

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というわけで囲炉裏暖炉に似合うミニマルな自在カギが完成した。材料は家にあるものをかき集めただけ。費用はほぼタダ(笑)。

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このヤカンの水が約10分で沸騰する。やはり三つ爪五徳でやるより断然早い。

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沸いたら鎖を調節してヤカンを上げ炎から遠ざけてもいいが、サイドの三つ爪五徳に移動して、燠炭で保温しておけば安心である。

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そのときは自在のワイヤーを側面に引いておくと見栄えがいい。そのためのフックも作った。

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やはり、薪で焚いたお湯は旨いのである。番茶などはとくにそう感じるのだ。

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しかし、設計の段階でこの自在カギを思いつけばたいしたものだが、実際に暮らしの中で使ってみないとなかなか思いつかないものである。

だから、家づくりにおいて「住みながら創る」という余白を残しておくことは大事だし、有名設計家にすべてを頼んでしまう陥穽はここにもある、と思った。


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