ツキノワグマ勉強会(2日目)


「明日は鳥肌が立つほどの現場に案内するよ」とgakuさんに連れられたのはやはり高速道路の近く。肉眼では解りづらいが、双眼鏡で見るとものすごい数のクマ棚が・・・。

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右上輪の拡大図。たくさんありすぎるので2カ所だけ矢印をつけてみた。樹種はクヌギである。純林に近い密度なので古くから里山として管理された場所なのかもしれない。

伐採後、切り株から萌芽更新で伸びてきた若い林である。その隣にはもっと若い林もある。若くて低い木には棚はできない。登る必要がなく実が食べられるからだ。また、豊作の年にはたくさん実が落ちるので、棚ができない傾向にある。

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大きな柿の木。ここはかなり前から棚田が放置された場所。

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その木にはクマの爪痕がたくさんついていた。かなり昔から頻繁にやってきた様子が解る。

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その田んぼ跡にクマ用の檻があった。

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中にクヌギのドングリやカボチャがまかれている。白い箱の中には蜂蜜が入れてある。これが標準的なエサだそうだ。しかし、クマがすべて蜂蜜が好きなわけではなく嗜好性のあるクマは全体の1割くらいという。

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現役の田んぼの奥に民家が見える日当りのいい斜面。そこにあるクリの木にクマ棚が・・・。隣は竹林。柿の木もあり、そこにハチ洞がくくり付けてある。タケノコも好物だし、クマの誘因物資がいっぱい。山村は過疎で若い人はいない。

昔は山村集落では犬を放し飼いにしていた。各戸に犬がいて、他の人が来ると犬の声や位置で人の移動まで解ったほどだった。野生動物を犬が撃退していたのだ。それがない。ふいに出会うクマに襲われる事故が絶えない。今後も増え続けるだろう。

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橋上の道は風が強いので融雪剤の塩カルをたくさんまく。それが融けて側溝に集まり、管を伝って流れ落ちる。側溝に塩カルを吸った落ち葉がたまりその腐葉土にミミズが来る。そのしょっぱい味がするミミズはイノシシの大好物。サプリメント効果で元気もりもりになったイノシシが、過疎の中山間地の休耕田や畑、竹やぶなどを荒らしまくっている。放置された山村の敷地は野生動物の楽園である。そんな場所が日本中に膨大な面積をもって、いま静かに広がっている。

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信州にもスギ・ヒノキの荒廃人工林はある。しかしカラマツのほうが多いので、写真のような下草のない暗い人工林はそれほど多くない。カラマツは陽樹で、かつ落葉する。雪折れもするので、放置しても林床に日が差すようになり、コナラ、クロモジなどクマのエサになる樹木が出てきている。

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しかも荒廃林でもクマが皮をはいで枯らすことがある。クマはぎが森直しをしている。クマはぎには2種ある。木を枯らそうとして大きく皮をはぐ。条件の悪い木(たとえば直下が岩や小石など)を間引いていることが多い。間伐になっているので森が明るくなりクマのエサになる灌木が生えてくる。もう一つは木の皮をはいでから幹を部分的に齧るもの。数十年たてばウロができる。次世代のクマに冬眠場所を作っていると考えられる。

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gakuさんの車を追いつつ次のポイントへ。

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ミズナラの純林にこれまた鳥肌が立つようなクマ棚のオンパレード。パルプ材として伐採した後、萌芽更新した林だ。隣にもっと若いミズナラ林もある。

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拡大造林時に一時的な草原状態をつくったことから、シカがものすごく増えるきっかけをつくった。サルもまたしかり。ふつう森を伐採したら野生動物は激減するはずなのに、日本ではそうはならなかった。むしろ増えてしまったのだ。加えて、エネルギー革命で里山が不要になり、放置したことで(過疎も加わって)野生動物のえさ場をつくった。

人工林は間伐政策の失敗によって風雪害をしこたま浴び、経済林としては荒廃したが、野生動物にとってはエサだらけのジャングルのような楽園状態の場所が増えた。これからも増えるだろう。たとえば今冬の大雪で岩手の人工林は壊滅的に折れた(林業被害6億円/asahi.com2011.01.15)。私たちが10年前に提唱した鋸谷式間伐を施しておけば、この被害を防げた上に、健康的ですばらしい人工林(針広混交林)を残せたのである。

いま、クマにとって非常にいい条件が揃ってしまったのかもしれない。しかしその自覚が人間にないとしたら、クマにとっても不幸なことである。

この年の絶妙のタイミングで、gakuさんに教えを受けたのは僥倖であった。木曽路の帰りに私たちは車上からいくつものクマ棚を発見した。民家の近くに、国道のトンネルの上に・・・。

これからどこに行くにも双眼鏡を手放せないナ(笑)。学びの多い充実した二日間であった。gakuさん、スタッフの皆さん、お忙しいところよい機会を本当にありがとうございました。これから独自の探求と報告を頑張ります♪


コメント

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