「とにかく香川の山は竹が多い。飛行機が高松空港に着陸するとき、上空から竹に覆われた山の斜面がたくさん見えてぎょっとするほどだ。管理放棄された竹山が地下茎でどんどん広がって他の樹木を侵食していくのである」
~これは今から10年前、2001年の5月に高松に降り立ったときの日記の一文である。その後、香川は毎年のように訪れて、荒廃竹林の行方を観察していたが、今年は今までと違うパルスを、信号を山々から感じた。
それは竹林が衰退し始めているのではないか、という感覚である。
代わりに、広葉樹が大きく育ち始めて、竹を駆逐し始めている。
あらためてそういう視点で讃岐平野の里山を見渡してみると、確かに竹林の中に、元気な広葉樹が居る。広葉樹がどんどん力を出し始めている印象なのだ。2000年代の中頃には行政の間でも荒廃竹林の蔓延が取り上げられ、指導をしたり助成を出した時期があったようだが、面積的にとてもやりきれなかったはずだ。
タケのない場所でも、マツ枯れ跡を中心に、広葉樹が勢いを増して、木が相当大きくなってきた。香川は雨が少ないので木の生育は悪いかもしれないが表土は流れにくく堆積していく。
自然林の場合、放置すればそれに見合った樹木が大きく育っていく。竹は一時期、地下茎で増えて勢力を伸ばしていたが、間引きの管理がなければ、養分が不足して弱っていく。ここ香川でもイノシシがかなり増えているらしいので、竹の子の食害もあるのかもしれない。
また近年はタケの天狗巣(てんぐす)病という病気がタケを枯らしているらしい。もともとタケ類は60年から120年周期で開花・枯死する性質を持っていて、1970年代にマダケの全国的な開花・枯死があった。この天狗巣病は西日本ではマダケが中心だが、静岡ではモウソウに大きな被害が出ている。しかしこれは被害ととらえるより、手間のかかりすぎる竹林拡大の抑制対策として喜ばれている側面もあるようだ。
讃岐平野の里山から、徳島県境の奥山を走ってみる。マツ枯れ跡の広葉樹回復。
山はどんどん変化している。
新著『「植えない」森づくり」の中で、マツ枯れのメカニズムの解明と薬剤空中散布の批判を書いたが、これはなにも私だけではなく、山に住み、日々山を観察してる人なら膝を打って同意してくれるだろう。
さて、四国のクマを探してみようかな。