福井講演旅(その6/浄土寺)


最終日、大阪から岡山の宇野まで陸路を走り、フェリーで高松へ帰る。その道行きで見たいお寺があった。兵庫県小野市の「浄土寺」。鎌倉時代の建物だが、ここに快慶の大作「阿弥陀三尊像」がある。

夕日を堂内に導き、床の反射を利用して、内部の朱色と仏像の金地を輝かせ、極楽浄土、来迎の風景を現すという劇的な光の演出効果を備えた御堂としても有名である。高校生の頃からこの寺の写真を眺めていたが、小野市は畑と溜池の点在する何の変哲もない田舎町だ。さすがに行く機会がなかった。カーナビを頼りに近づくと、「国宝 浄土寺」という大きな看板と駐車場が見えた。

これが仏像を内する浄土堂だ。大きい。僧重源によって建てられた。鎌倉時代のはじめ、東大寺の再建工事のときに重源は要職についていて、所領としてこの地を与えられ、それで浄土寺を造ったらしい。南大門とともに大仏様という特異な様式で、その内部は梁が45°に突き出て、雄渾で圧倒されるほどだが、中央に鎮座する巨大な阿弥陀三尊像がまたすばらしい。

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晴れた日の夏の夕刻には堂内が光り輝くというその写真も置かれていた。

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仏像は寄せ木づくりでお堂の中央に円形の台座があり、そこに載っているかたちなのだが、載っているのではなく、基礎まで木部が貫かれているという。だから、快慶はここで建築と同時進行でこの巨大な像を彫ったのだ。天蓋もなく、周囲に須弥壇のような飾りも一切ない。その潔さに打たれる。

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夕刻まで居れる時間がないのが残念だが、又必ず来よう。

苦労して足を運んで、優れた作品に触れるのはいいことだ。「ああ、仕事というものはこうでなければ・・・」と、ときに弛んだ心に冷や水を浴びせられ、背筋を伸ばさずにいられなくなる。大いに鼓舞される。この地球に生きる意味を、作者の熱意とその空間から教えられる。

フェリーでうどんを食べる。これからこの讃岐うどんが私のソウルフードになる。大槌島。

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高松の街が見えて、旅の終わり。

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洋上で新聞記事を受信した。

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