西上州名峰の昔


前橋の県立図書館で郷土資料を探した。3日に楽しみにしている秩父夜祭りに関して調べものをしようと思ったが、考えてみれば秩父は埼玉県だ。上州の本で『秋山郷と西上州の山々~首都圏から最も近い秘境案内~』小板橋光著(山と溪谷社’92)という山岳紀行を見つけて借りる(アトリエのあるH集落はこの西上州の山の麓にある)。

「瀬林から三十分程で、神流川に架かる古鉄橋を渡って神ヶ原に到着した。十石峠に通じる国道で万場行きのバスを待っている間に、雨は急速に上がって青空が広がり、神流川を隔てた正面に叶山が全容を現してきた。急峻な岩肌を巡らせた岸壁となだらかな丸みを持った頂上は、独特の美しい姿をみせて、古くから西上州の名山と呼ばれた秘境の地にふさわしい雰囲気が感じられた」

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ホウレンソウの味


近所に住む林家のKさんがカキを採りにきた。僕らが取りきれない高い位置にあるものを、木登りして、竹の先端を割ったもので次々と採っていく。やっぱり山暮らしの年期がちがう。カキの木は折れやすい。枯れた枝には絶対に乗らないこと。奥さんからお礼にダイコンとホウレンソウをもらった。ダイコンは僕らも作っているのだが、上の畑は全体に成長が悪い。Kさんの畑のものはかなり大きい。しかしホウレンソウの味は僕らのほうが勝っていた。

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甘楽のおばあちゃん


ライブ、連載原稿とひと息ついたので「今日は一日遊ぶぞ~~」とまたコペンでお出かけ。敬愛する東京在住の建築家Hさんの事務所で、甘楽の住宅設計をやっているとのことで、建築中のそれを見にいってきた。来週は土壁塗りのワークショップが行なわれるそうだ。竹こまいがびっしりと作られている。

写真をとって出発しようとしていると、助手席の窓枠に手をかけて、老婆が突然現れて僕らに話しかけてくる。「おばあちゃん歳いくつ?」「ちょうど100歳だよ」僕らは嬉しくなってエンジンを切り、いろいろ話し込んだ。養蚕の仕事をやっていたこと、井戸で水を汲んでいたこと、ここの道はむかし雨が降るとぬかるんで下駄の歯が食い込んで大変だったこと、いまは道もよくなって湯治場もできて楽になったこと。

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「ありがとう、おばあちゃん。また来るよ」

コペンのエンジンを再びかけ直す。おばあちゃんは僕らにリンゴを二つくれた。


脱穀と手みと天日干し


お隣のイタルさんが朝から大豆の殻外しをやっていたので手伝うことにする。ヒノキの間伐材のこん棒で叩いていたので、僕もスギで同じ物をつくって手伝い始めた。昔はもちろんこの大豆で味噌をつくっていたそうで、3年寝かせたものを順繰りに食べていたそうだ。

「麹も自分たちで作るんですか?」
「ああ、ばあさんが作るのが上手かったよ」

それにしてもかなりの量だ。今年は豆類が豊作だった。豆類は肥料は必要なく、連作もできる。外した殻や茎はコンニャク畑のくぼみに敷いておき、水はけの悪い場所の水吸いに使うそうだ。

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人物の新作(見に来てネ♪)


朝飯の後、ギターの練習をしていると区長さんが来た。防災関係の役員になってほしいとの要請で、なにしろ若い住人が限られているので、快諾するしかないのである。Y先生と掘り起こした巨大コンニャクイモを見てさすがの区長さんもぶったまげている。帰り際、干し柿をみて「まだ早いな、11月中頃がいいんよ。あんまり早くからすると、中が膿んでしまうんだ」とのこと。そういえば、郵便屋さんにも「霜が下りてからがいい」と言われたんだっけ。まあ、失敗の経験も大切だから。

数日前より個展の新作に突入している。自分でもなぜだかよくわからないんだけど、僕は人物や顔を描くのがすごく好きで、落書きのようなスケッチをしているといつも人体や顔を描いている。しかし、こんなものは自然系イラストレーターの仕事の中で描くチャンスはほとんどない。それでもたまにデッサン風似顔絵を描く期会があって、そのたびかなり好評なのである。きっと僕のもうひとつの重要な部分がここにあるんだと思う。
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