23年ぶりの海外旅行・イタリア/11日目その2・パドヴァ、スクロヴェーニ礼拝堂


そもそも子どもの頃から絵を描くのは好きだったし、僕らの小中時代は手塚治虫、赤塚不二夫、ちばてつや、石森章太郎、などなど古典漫画の全盛期で将来は漫画家になろうか?・・・なんて思っていた時期もあるのだが、僕が絵画に目覚めたのは東京の叔母が僕を幼少の頃から美術館に連れ出してくれたことに始まる。

今でも鮮明に思い出すのは上野の美術館でみたレンブラントやゴーギャン、ルソー、モネ、などの大絵画である。そして、中高生のとき母親が『巨匠の世界』全18巻(タイムライフブックス/刊行年昭和43〜46年)を買ってくれたのがダメ押しとなった(笑)。

『巨匠の世界/第9巻/WATTEAU』いまアトリエの本棚にはこれ一冊だけがある

この全集はルネッサンスから近現代に至るまでの巨匠を網羅したもので、各巨匠の解説の中にその歴史的背景や関連する他の画家たちの作品なども掲載されており、西洋絵画史をほぼトレースできるという当時としては画期的なものであった。

まさか母もここまで僕が絵画に傾倒するとは思わなかったのだろうが、僕はこの全集に多大な影響を受け、すっかり覚醒して油絵まで始めてしまい、将来は絵の仕事に進もうと決意したのだった。

その第1巻が『GIOTTO(ジョット)』で最終巻が『DUCHAMP(デュシャン)』だったのである。だから僕はジョットのスクロヴェーニ礼拝堂を高校生の頃から図版で見ていたのであり、いつか現地で観たいものだと思い焦がれていた。まさに50年という半世紀の時を経て現地に向かっているのだった。

しかし、この礼拝堂がまたサグラダファミリア同様にハードル高く厳重なのである。オンラインでの事前予約なしには見ることができない。日本から何度かトライしているのだが途中で弾かれててしまい買うことができないでいた。

▼「スクロヴェーニ礼拝堂」公式ページ
https://www.cappelladegliscrovegni.it/index.php/it/

ヴェローナからスクロヴェーニ礼拝堂のあるパドヴァまでは電車で1時間。麦畑が流れる車窓を横目で見ながら、iPhoneでチケットに再トライするも本日分の空きはすでになくなっていた。

が、ここで諦めるわけにはいかない。ともあれダメ元でも礼拝堂まで行ってみることにした。スクロヴェーニ礼拝堂のあるパドヴァは人口約21万人の北イタリア最古の都市とも言われており、古代ローマ時代に作られた円形闘技場があることでも有名である。礼拝堂は同じ公園内にあることからアレーナ礼拝堂とも呼ばれている。高利貸で財産を築いた一族出身のエンリコ・デッリ・スクロヴェーニがパトロンとなって創設され、1305年に完成した。内部は他の装飾がほとんどなく、ジョットの絵画で埋め尽くされており、その一連のフレスコ画は西洋美術史上もっとも重要な作品と言われている。

パドヴァ駅には13時過ぎに到着し、その公園まで駅から歩いていった。建物はすぐにわかった。意外に古びていない。中に入りチケット売り場のおばちゃんに「日本から何度もチケットを取ろうとしているのだがうまくいかないのだ。今日見ることはできないだろうか?」と片言の英語で詰め寄ってみた。マティスのヴァンス礼拝堂が見れなかった失意を思い出した。おばちゃんはため息をついたあとモニターに向かってキーを叩き、ニコリを微笑んで「3時過ぎででよければ・・・」と言ってチケットを販売してくれた。

フレスコ画独特の淡い色彩感が好きだった。ジョットの描く青い顔料ラピラズリの空が込められた、美しいデザインのチケットだった。美術館内のパティオでスケッチしながら時間が来るのを待った。

中に入れるのは25人ひとくりぎで、待合室で待たされたあといよいよ礼拝堂の中へ入る。わずか數十分。50年前、高校時代に図版でみたジョットが目の前に現れる。ラピラズリの青が充満しているかのようで、そしてなんとも爽やかだった。

左右の両壁を3段に分け、そこに新約聖書の代表的な場面を絵巻物のように描いている。

そして正面に「最後の審判」

天井。

嘆き悲しむ天使たち。その表情がかわいい。

「受胎告知」の名場面。

天井のマリア。

この空の巻物風が好き。

深い充足感を得て、駅へ戻る。

いよいよヴェネツィアへ。

イタリア/11日目その3・ヴェネツィアヘ


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