「大地の再生」+巻き枯らし@島根・桜本美林


前回は雨に見舞われたが今回はよく晴れて絶好のイベント日和。

桜本さんの休憩小屋が完成していた。ここで枯れ落ちていた中から4mのを竹を取り出して、皆で密度を測れるように持参。

驚くほど整然と管理された桜本美林。

山主の桜本さんはこの山の裏手に自宅があり、歩いて管理ができるようになっている。我々を出迎えてくれ、丁寧に挨拶する桜本翁。

釣竿を回してざっと密度を計り、樹高を確かめてみた。

鋸谷式の密度管理に比べて1〜2本多いのだが、意外にも形状比は高くない。枝打ちが徹底して為されているためだ。

鋸谷式の密度管理では「枝がらみ(上部で枝が接触していること)」は1本の木に対して1〜2本までとする。3本では多すぎで、4本のうち1本は衰弱していく。桜本さんの山は2〜3本と微妙なレベル。

さらに上のヒノキ林を目指して上がっていく。広葉樹はほとんど生えていない。草はやコケ類はあるがところどころ土が露出している場所があり、窪地には溝が掘れて水が流れた跡がある。

ヒノキ林に着く。下層植生は少ないが、よく枝打ちされていて比較的明るい。ところどころ漏脂病の木が見える。

桜本さんが巻き枯らしを了解してくれたのでいっしょに選木をする。

皆が注目する中、僕の解説を交えながらまずは1本目。

材を使いたい場合はできるだけ下にノコ目を入れ、ナタで縦にノコ目まで10㎝ほど切れ目を入れ、そこにナタの刃を差し込んできっかけをつくる。ナタでなくても竹でヘラを作ってきてもよい。

あとは皮を引き上げれば、今の季節は驚くほど簡単に皮が剥ける。

たいがいは枝のところで引っかかって皮がちぎれ落ちるのだが、桜本さんの山は枝打ちがよくなされているので上まで面白いようにどんどん剥けてしまう。

途中でちぎれても「直径の7倍」の高さを剥ぐことができれば確実に枯れるので問題はない。それにしても枝が巻き込んだヒノキの肌は滑らかで美しく、また良い匂いがし、皆が感嘆の声をあげる。そしてそれぞれが実演を始める。

巻き枯らしを初体験する桜本さんも驚かれたようだ。そして美しい木肌に満足げな表情。

全部で10本ちょっと、時間にして約1時間の体験施業だった。散乱した皮は丸めて小山を作って分散しておく。この皮を重ねて屋根材にするのが「桧皮(ひわだ)ぶき」である。山暮らし時代にこの皮を細かく裂いて、それを編んでコースター(一輪挿し専用)を作ったものを今も使っているが、皮もまた乾燥すれば非常に長持ちする。

巻き枯らした木はひと夏経過すれば葉が落ちて空間ができ、伐倒間伐と同じ効果がでる上に、残した木の支えとなって風雪害を回避できる。さらにその枯らした木は、後で伐採すれば、良質な天然乾燥木の材として使うこともできる。

漏脂病の木の剥き跡。何らかの傷口からウィルスが入ってできるとも言われている。皮は剥きにくいが、これも上部は材として問題なく使える。

コーディネーターのKさんが下でカレーを準備して待っていてくれていた。

ミツバがたくさん自生している。それをトッピングにして。

食後、桜本さんのお家に寄らせていただき、納屋の中にある枝打ちの道具類を見せてもらった。ハシゴは自作のムカデ型で、それを木に巻きつけて

ハシゴ自体は6段くらいしかない。そこから小丸太を枝に縛り付けて登っていく。

これらの道具で8メートル以上の枝打ちを、たった一人でこなしてきたというのだから驚きである。

実際に縛ってもらうことになった。

参加者も体験。この体制で1本1本取り付けながら枝打ちをしていく。なかなか容易ではない。落下したときのために命綱もかけながら登っていくのだが、桜本さんはこれまで1度も落ちたことがないという。

午後からは林内に「大地の再生」の施業を。水路として掘れてしまった溝に、炭を入れ、枯れ枝とスギの葉を編み込むように入れていく。

裸地化している場所にはスギ枝を使って小さな抵抗冊を作る。

いきなり角杭と番線では、山主の桜本さんに嫌がられるかと思い、木杭もスギの枝で作り、シュロ縄で緊結することにした。

なんとか桜本さんを説得でき「巻き枯らし」と「大地の再生」施業を受け入れてもらえたのは大きな収穫だった。夕刻は時津風に戻り、懇親会と意見交換会をした。

明日は「里山インストール」の工房周りを見る。

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参考:ヒノキの皮で作ったコースター。

細く裁断した皮を井桁(四つ目)に編んだもの。末端は麻紐でくくる。

裏側。


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