高見島の石垣と瀬戸内国際芸術祭22秋


多度津港から午前中の船で高見島に渡る。けっこう急峻な山だ。民家は南側に集中しており、海岸に近い山裾にあるだけ。

港にはさっそく瀬戸芸の作品が。

急峻な地形の島だ。きっと石垣がたくさんあるにちがいない・・・と楽しみにしていた。さっそく、小学校(この中にも作品があった)の裏手にすばらしい石垣があった。

野石を使った谷積みだが、角の部分は算木積みで不揃いの石を見事に組み上げている。

そしてのっけから驚かされたのは、この古民家(島で一番の成功者のものという)の城のような切り石の石垣だった。不定形の四角形の花崗岩を紙一枚の入る空きもなく組み上げ、しかもきれいな反りまでつけてある。なぜか写真がない。あまりに凄過ぎて写真を撮り忘れてしまったようだ(笑)。

地形的には男木島によく似ている集落といえるが、その空き家率は9割を超える。なにしろ人口は現在22人でほとんどが80歳以上という。しかし、男木島に比べ崩壊した石垣は少なく、家周りの草刈りや剪定などもすっきりと行われているように見える(その理由はのちに島唯一の民宿「森田」の親父さんの話で納得した)。

作品は廃屋を使ったものが多い。

庭の木(上部はすでに切り倒されている)の根っこを掘り起こしてサークルで囲み、家の中にもそれが伸びているのを対比させた作品。

ベンチで一休み。右から畑と森の持ち主のKさん、酒井さん、僕の両側が東京からの「きらめ樹」の2人。

お昼は海外作家の作品のある海のテラスで。

白ワインとパスタ。真鯛の白いパスタと地鶏のトマト味があったので後者で。なかなか美味しく、眺めも絶景。しかし、スズメバチが料理にまとわりついていっとき気が気じゃなかった。

直島のジェニファー・バートレットを思い出させるような作品。

平積みが勝っているような小石で積まれた石垣。花崗岩だけでなく様々な石が使われているようだ。

この作品はちょっとびっくり。暗い古民家の内部の光の穴がたくさん空いている。

土壁や瓦にまで穴をあけて鉛筆のような透明樹脂を差し込んであるのだ。

美しい石垣が出ると思わず皆に説明してしまう。

最上部にある作品の民家にたどりついた。

ウォーホルのポップアートのような、意外な花の絵が。

そして2階はバラと古い洋風家具を用いたインスタレーションが。

しかし高見島は残されたその圧倒的な石垣と古民家そのものが、

そこに置かれた異物そのものが現代アートに見えてしまうほど魅力的だった。

錆びた鉄板が溶接された壁。

内側が光の洪水でまばゆい。全体に暗い廃墟に光や鮮やかな異物を挿入することで静謐な火花を散らすという手法。もうひとつは島の伝統や自然に問いかける作品。

ここ高見島を含む塩飽(しわく)諸島は、塩飽水軍と塩飽大工で名を成しており、幕藩時代は天領のような位置付けでどの藩にも属さない特別自治区だった。民宿の親父さんに聞いたのだが、島の住民は本土に渡っていても、定期的に帰島し道普請などの掃除に参加しているという。

だが、再生してこの島を持続させるにはあまりにも人数的に非力なのであり、親父さんは「このままゆっくり朽ち果てていくのでいい」などと言うのだった。日本の気候風土は欧米に比べてはるかに過酷であり、古民家も石垣も傷みが早く、そして植物の繁茂力もすごいので本土の山村でさえその維持が容易ではない。まして島となれば。

しかし、これらの古民家と石垣を残せないなんて何と勿体ない・・・。今ならインターネットも水道も電気もある。ここに美しく住んでみたいと言う若者と、それを指導できる人材が名乗りを挙げるなら、まだ間に合うかもしれない。


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