シラサエビの味


鮮魚に強いスーパーKでシラサエビを見つけた。香川県産の天然エビである。これまで数回購入したことがあり美味しいエビなのだが、めったに見かけない。ちょっとお高いが、先日の輸入養殖エビの不味さを書いので味比べするべく買ってみた。

シラサエビ(ヨシエビ)はクルマエビ科ヨシエビ属の中型エビで、クルマエビの近縁種である。産地は主に西日本で、クルマエビのほどの値はつかないが食味の良さから寿司ネタや天ぷらの種などの需要が多く、活け物は高級エビとして扱われている。

おそらく朝は脚が動いていただろう生エビである。一派に生エビは鮮度落ちが非常に早い。一匹だけ茹でてみた。クルマエビやブラックタイガーほど鮮明に赤くはならない。

甘みが強く、養殖輸入エビのような嫌な味はやってこない。残りは冷凍することにした。

そして本日6日目に解凍。以前に不快に感じた同じ中華で食べてみる。八宝菜である。今回のキノコはエリンギ、そしてキクラゲも。

イカナゴ醤油でユイジャンを作っておく。これがあるとニンニクやショウガを刻んで入れる手間が省け、煩雑な手順の中華料理が簡単になる。もちろん味もすばらしくグレードアップする。この手の料理では牡蠣油がよく使われるが、市販品は砂糖甘と化調がくどいのであまり使わなくなってしまった。このユイジャンは焼きそばにも合う。

作り方はこちら

それにしてもこの小豆島放牧豚のバラ肉はすばらしい。人気の部位で単品では入手が難しいと聞いたが、さもありなん。脂の質がいいのである。

ラードがにじみ出てきたらその脂で火の通りにくい野菜から入れていく。半分ほど火が通ったところでユイジャンと醤油。

キクラゲを入れたら鶏ガラスープを入れる。

スープが煮立ったら片栗粉をまぶしたイカとエビを入れ、とろみをつけて青みを入れる。最後にごま油。

今日もご飯を盛って中華丼風に。

八宝菜はスープと調味料の本物度がモロに出てしまう料理です。そして素材の旨味もダイレクトに伝わる。重要なのは肉や魚介にわずかな塩でいいから下味をつけておくこと。餡の塩味と一体化して美味しく感じ、素材の味わいが立ってくる。

シラサエビの味は抜群で、片栗粉による下洗いはしていないのに臭みや嫌な味はまったくない。

先日、県立図書館の郷土図書コーナーで『瀬戸内海汚染』というかなり古い岩波新書(1972 )を見つけた。著者は星野芳郎、1922年生まれ、帝京大学経済学部教授を経て技術評論家。目次と図版をぱらぱら見ただけだが、高度成長期に瀬戸内海は相当なダメージを受けていたことが見て取れる。

昔はとにかく物凄い豊かな海であったらしい。

「広い区域に亙る優美な景色で、これ以上のものは世界の何処にもないであらう。将来この地方は、世界で最も魅力のある場所のひとつとして高い評価をかち得、沢山の人を引き寄せるであらう。 《中略》 かくも長い間保たれて来たこの状態が今後も長く続かんことを私は祈る」

とはドイツの地理学者、リヒトホーフェンが1860年に瀬戸内海に立ち寄ったときの感想である(『リヒトホーフェン日本滞在記―ドイツ人地理学者の観た幕末明治 』)。もちろんここは世界に稀にみる漁場であり、1970年代の漁業生産量を単位面積で比較すると地中海の実に25倍もあった。

現在では工場や都市下水の規制により回復はしているが、プラスチック汚染など問題は続いている。一方で海域が貧栄養に陥っているという話もよく聞く。原因は複数あるが窒素やリンなど栄養塩類の流入負荷が減りすぎたこと、さらにダムによってそれらがせき止められてしまうこと。ため池が使われなくなり、ゆる抜きによる泥の流入が激減したということもある。

森林の状態も重要であろう。「大地の再生」で海の研究者と話をしたことがあるのだが、海が貧困なのは山が荒れて土がグライ化し腐っているから。一番必要なのは人工林も自然林も間伐すること・・・と言っていたのが印象的だった。

もっとも、沿岸の周回道路や砂防ダムと三面張の護岸によって海への流入がせき止められていては元も子もない。だから、総合的な改善が必要なのだ。

僕は森林のウオッチャーでもあるのだが、同時に10年前に香川に来てから、ウナギを釣りに行ったり、定置網を取材したり、島に滞在したり、瀬戸内魚類をいろいろ食べて見たりして、その再生は必ず可能なのだと、兆しと可能性を感じている。

日本人は自国の天然エビに戻るべきなのだ。


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