ホテルの無料朝食は食べずに浅草へ歩く。
雷門の前には隈研吾の「浅草文化観光センター」。
上野駅からちょっと歩いたところにある立ち食いそば「元長」。
東京には信じられないほど安くて旨い立ち食い蕎麦屋が何件もある。そりゃ香川のうどんも凄いんだが、この手の蕎麦だけは関西圏では絶対に食べることはできない。ここ、お客の注文を受けてから天ぷらを揚げ始め、生そばを茹でる。めちゃ旨かった!
美術館が開くまで時間つぶしにカフェへ。
目の前に上野駅のガード。すぐ右にはアメ横の入り口がある。まだ絵(イラスト)で食えなかった頃、年末にアメ横でよくバイトしたものだった(30過ぎまでバイトと絵の仕事とを交互に繰り返していたのだ)。あの頃の僕は、どうやったら自分の絵の仕事を確立できるか、そればかりを考えていた。30年前、僕はこの交差点を苦悶しながら歩いていたのだ。
雨は降り続いたままで、上野公園の濡れたイチョウの黄葉が美しかった。
早めに来たのでゴッホ展は思ったよりじっくり見ることができた。これまた若い頃の話で恐縮だが、サラリーマン時代に(僕は大学卒業後の22歳から24歳までの2年3ヶ月間、東京の代々木で会社勤めをしていたのだ)岩波文庫の『ゴッホの手紙』をよく読んでいた。いずれその辺の話は稿を改めてブログで書くことになるだろう。
ゴッホの絵はハズレなしですべてが素晴らしいのだが、特に最後の部屋のサン=レミの修道院で死の直前に爆発するように描き上げた一枚に痺れてしまった。
「こんな絵が人間に描けるのか・・・」
心のなかに思わずそんな声が漏れた。
痺れて熱くなった身体のままに出版社のある赤坂まで行き、打ち合わせを済ませて青山通りまで歩いていると、雨が上がって虹が現れた。
昼飯を食べ忘れたので「崎陽軒」の駅弁と「まい泉」カツサンドを買って新幹線に急いだ。京都を通過。ライトアップの東寺の五重の塔が輝いている。
時間があれば京都に一泊したいところだが。まあ、ワインとカツサンドで満足するとしよう。
今回はワシントン・ナショナルギャラリー蔵の『薔薇』が来ていたが、ニューヨークのメトロポリタン美術館にはゴッホの傑作がたくさん(たとえば『アイリス』など)ある。ニューヨークといえばホイットニー美術館もレンゾ・ピアノの設計で移転オープンしたし、もちろんライト設計のグッゲンハイムも見なければならない。
仕事が落ち着いたらアメリカの美術と建築行脚だ・・・。いや、まずはイタリアか・・・。そんな決意と逡巡をしながら(笑)、瀬戸大橋を渡った。