広隆寺、桂春院、京都dddギャラリー


名古屋会議の準備前夜、直帰するのはもったいないので何か展覧会はないかとネットで調べていたら、「京都dddギャラリー/組版造形 白井敬尚」が目に止まった。ブックデザインやエディトリアルデザインを中心に活動を続ける白井敬尚氏(デザイン誌『アイデア』のアートディレクションが代表的な仕事の一つ)の装丁・組版を見せるという異色の展覧会である。

京都dddギャラリーはグラフィックデザインとアートにまつわる企画展を開催、大日本印刷が設立した「DNP文化振興財団」が運営している(監修は永井一正)。場所は広隆寺や映画村のある太秦(うずまさ)にある。香川に引っ越してから京都はかなり通っているのだけど、太秦周辺だけは未だ行けずにポッカリ抜け落ちた場所だった。

ギャラリーは11時オープンなのでそれまで寺巡りをしようと、まずは広隆寺へ。言わずと知れた「弥勒菩薩像」があるお寺である。国宝第一号の菩薩像はまだ写真でしか見たことがない。

その像は霊宝殿の中にある。中は驚くほど広い空間で、四周に仏像がずらりと並んでおり、弥勒菩薩はその奥壁中央にあった。

右足を左膝に乗せ、右手をそっと頬に当てて思索にふける半跏思惟像、ドイツの哲学者がこの像を「人間実存の最高の姿」と激賞、京大生が像に触れ指を折ってしまったことでも有名。1967年発行の15円切手にもデザインされている。

半跏思惟像は奈良中宮寺(法隆寺の裏手にある)のものを見て感銘を受けたことがある。広隆寺のものはいっそう胴体が細く、その割に足が大きめでかなりアンバランスな感じを受けた。しかし、遠いし暗いしで、残念ながら彫刻的感動はそれほど伝わってこない。

それにしても霊宝殿の空間と仏像群は凄い。これほどのものとは思わなかった。数えてみると仏像は50躰以上あり、そのうち国宝が20点、重要文化財はその倍以上ある。中央に佇むと、緒仏たちから霊的ビームを受けているようでくらくらしてくるのだった。

係員に会釈して外に出るとまだ10時前、もうひとつ寺巡りをしよう。太秦の映画村前を通って(中にははいりませんでした)・・・

妙心寺へ。正式には「臨済宗妙心寺派 大本山妙心寺」といい、中心伽藍の周囲には多くの塔頭(たっちゅう)が建ち並ぶ日本最大の禅寺である。庭園など自然も多いことから京都市民からは「西の御所」と親しまれている。

さてここで1時間、何を見るべきか? 案内図の大きな看板を見ながら考えた。いくつかある庭園のうち「桂春院庭園」という文字が印象に残った。しかし、そこは境内の一番北東、歩く距離はかなりある(笑)。

でも、美しい石畳や石垣や漆喰壁、そして所々現れる塔頭の門越しに見える前庭などに魅了されつつどんどん歩いてしまう。そして、着いた。お抹茶もいただけるようだ。

拝観料400円を払って中へ。

のっけから、廊下沿いにある枯山水風の坪庭に心を奪われる。なんだろう? バランスがいい。樹木やシダなど緑の表情もくっきりしている。

書院。ここから見るのが「侘の庭」。

茶室「既白庵」は床の間の裏にあるが非公開。

本堂へまわる。

正面が「真如の庭」、手前にツツジの刈り込みが並ぶ。

ここからサンダル履きで外を見るようになっている。

庭から見た本堂。中に狩野山楽の弟子である狩野山雪による襖絵がある(状態のいいものだが撮影禁止)。

苔がよく発達して美しかった。

塔頭(たっちゅう)とは禅宗寺院独特の形態で、高僧の死後弟子たちが師の徳を慕い、大寺・名刹に寄り添って建てた小庵をいう。また大名が祖先や親族の供養のために造ったものもある(桂春院は後者)。

とくに塔頭が多いのはここ妙心寺と大徳寺だが、江戸時代までは京の禅宗五山に多数の塔頭があったそうだ。しかし幕末の「禁門の変」や明治政府の廃仏毀釈でその多く消滅し、公共の施設や民間に払い下げられ、現在は住居や商店になっている。

塔頭寺院の構成はどこも同じで、方丈を中心に南庭があり、枯山水の庭園や坪庭が作られ、方丈の襖には龍や山水花鳥の水墨画が描かれている。塔頭は室町・桃山時代に公家や武士の社交場であり文化・芸術の発信源、拠点であった。国宝級の芸術品多数所蔵されていたり、優れた庭園があるのはそのためだ。

せっかくなのでお抹茶をいただく。書院まで運んでくださる。

客は僕の他に一人中年男性が来たが、ささっと見て帰ってしまった。ひとり侘の庭を眺めながら茶を啜るのは贅沢な時間であった(寒かったけどw)。もういちど、秋に来よう!

ここからdddギャラリーまではけっこうな距離があるが、歩く。

到着は14時を回ってしまった(笑)。展覧会はなかなか良かった。時間をかけてじっくり見る。写真OKなので参考資料として撮りまくってきた。

地下鉄で京都市役所まで出て、新京極で食事して錦市場をひやかして帰る。しかし、錦は外人だらけでイートインコーナーがめちゃくちゃ増えた。

結局、京都駅まで歩いた。今日は10km以上歩いたかも? 東本願寺にも参拝。京都タワーと羅生門のような駅と東本願寺が一枚に入る構図。初めて撮ったな。

最後に本願寺に立てかけられた警句をひとつ。

「人は出会いによって育てられ 人生は別れによって深められる」

たくさんの良きものに出会った京のいちにちであった。合唱。


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