龍王様の祠から戻ると、庭では火が焚かれて羽釜のご飯や味噌汁が作られている。いつも皆で一品持ち寄りでご飯と味噌汁がいただけるという形式でやっているようだ。私はお弁当を作ってきてしまったが、せっかくなので少しだけ一通り頂くことに。
春野菜やらタケノコなど山菜やら手作りスモーク肉やら豪華である。羽釜のご飯も美味しい。
ちなみに私のお弁当はコレ。今日は曲げわっぱに直接ご飯を入れてみた。赤米ご飯の上に黒ごま、ちりめんじゃこ、梅干し。おかずはぬか漬け、紅生姜、アスパラの味噌マヨ和え、それに豆サラダ。わっぱに直接ご飯はなかなか良かった。洗うときは水を張ってしばらくおくと簡単にきれいになる。だだし、割り箸では食べにくかったので、先が細くなったいつものマイ箸に持ち替えて、一粒残さずきれいに食べた。
午後から反対側の尾根に登る予定だが、その前に上の敷地で草刈りと竹林整備を学ぶ。ここは不動産屋の管理地で、Sさんが草を刈る必要はないのだが、ここの整備も下流にある自分の敷地に連動してくるので関わっている。
地際から徹底的に刈る草刈りが身についている初心者はこの「風の草刈り」に最初はとまどう。
その方法の要点を、Sさんが的確に書かれれいるので引用させていただく。
4月下旬のこの時期、セイタカアワダチソウや、月見草の新芽がどんどんでてきますが、まだしっかりした芯の立たない20センチくらいときに、新芽の揺れる柔らかいところを、のこガマで風のように刈り落としていくと、一本根っこにならずに、根の力が分散して、伸び方がおとなしくなります。
時間がないときは、上の方の揺れるところを、まず落としておくと10日は穏やか。
矢野さんの草刈りは「風の草刈り」と名付けられています。根元から草刈り機で綺麗に刈ることはしないです。根元から刈ると、草がいじけてさまい、反発して後でとても勢いが増してきます。
きれいにツルツルに刈ってしまうと、風がさーっと表面を通り過ぎてしまい、大地に空気が入らないので、月日が経つと土がカチカチになって、そこには強い植物しか根をはれなくなる。草の揺らぎによって実は大地が呼吸をしているのですね。
草刈り機は、ナイロンロープの草刈り機を使って、風で吹き飛ばすイメージの刈り方です。
1)風が吹いたときに揺れるところを風のように刈る。
2)全体を一定の高さにせず、風の道の隙間を作る。獣道などの隙間は風の通り道になって、大地を柔らかくしてくれて、多様な生き物が住めるようになる。生きてるだけで全てが結い作業♡
どこに隙間をあけるのか? は地面のやや低いところは植物の背丈が低く見えるのでそこを抜いてもいいし、自分で「ここを抜いたら気持ち良さそうだな」と感じたところを基準にしてもよい。隙間をつくる場合は、のこガマを縦に叩くように使うと効率がよい。
そして、その残した雑草のブロックをカマボコ型に整える。あけた隙間を道代わりにして両脇の草を下からすくい上げるように撫で刈りすると簡単にできる。こうして滑らかな高低差ができると、空気がよく動き渦ができる。熊野の2日目のブログに書いたように草の中に空気も入りやすくなるだろう。
竹林の手入れは皆伐して抜きすぎない。曲がった細い竹は地際から水平に切る。これは飛び出した切り株での怪我の危険を避けるため。やや太いものは膝上くらいの位置で高伐りする。そのほうが作業が楽だし切り口も安全だ。その際、節と節の間で伐ると幹穴に水が溜まって根を腐らせたりヤブ蚊がわいたりするので、節のすぐ上で水平に伐る。
切った竹は枝払いをして幹と枝をそれぞれ分けて小山に積んでおく。その小山も小島のように分散させえて地面に風が通るように配置しておく。前にも書いたが竹の枝払いはナタを使うより、竹の幹を使って叩くと早いのだが、枯れたものや乾燥したものは硬く。手強い。今回、剪定バサミを使ってみたが、こちらのほうがノコより効率がいいようだ。
下に戻ってSさんの果樹が植えられた敷地の草刈りをする。樹の根元は低く刈る。ここはコルゲート管による水脈整備をする前はササが繁茂していたという。今はヨモギやフキなども生える普通の草地になっている。水脈整備によって古民家の湿気環境は劇的に改善されたというのは理解できるが、1年足らずで畑地の植生まで変わってしまうとは驚きである。
水脈の上流には湧き水があってその出口直下に小池を掘ってビオトープが作られていた。
土留めは木杭と竹で造ってある。矢野チームらしい仕上げ。
表面を焼き仕上げしてある焼き杭(防腐効果が高い)と普通の杭とを使い分けてある。まずしっかりとした支持杭として焼きのものを垂直に打ち、そこに普通杭をランダムに斜め打ちして番線止め。さらにその裏の土との隙間に竹の幹や枝を差し込んで土留めと泥漉しとしている。
草刈りアフター。この草刈りはGW前までに済ませておくと、その後の管理がとても楽になる。地元の人には当初「草刈機の刃が摩耗してるんじゃないのか?」などと言われたそうだ(笑)。
反対側の尾根に移動する。尾根間の中央から百田の棚田を望んだところ。南向きで日当たりが良い谷で、米を作るには最適なところである。ところが、いまこの両側の尾根にメガソーラーを建設する計画が持ち上がっているのだそうだ。
その反対側の尾根には石の道標やお地蔵さんがポツポツと点在する。
そしてとある上人様がむかし庵を構えていた小屋があったそうなのだが、その廃墟に石仏が埋もれたままになっているというので、今日はそれを掘り起こす、というのも大きな目的だった。
霊験あらたかな祈祷師で村人から慕われていたようである。
道に降りるとメガソーラー反対ののぼりが立っていた。両尾根の竜王様や上人の遺跡までつぶしてまで造る必要があるのか? ちょっと考えられないな・・・。
輪になって今日の感想会。解散後も地炉に火を熾してSさんらと語る。Sさんは僕の本の愛読者で、群馬の山暮らしの家まで訪ねに行こうかと考えたこともあるらしい。まったく、矢野さんの大地の再生仲間には、私の本の読者が多数いて驚いてしまう。
「この家に囲炉裏を作りましょうよ」と約束して、岡山を後にする。