囲炉裏にあたりながら年賀状のデザインなどをやっていると、イタルさんがやってきて「外の水道が壊れちまったんだ。塩ビの接着剤は持ってるかい?」という。凍結で破裂したようだった。アトリエにはいざというときのために塩ビ管はいろいろな径を用意してあり、曲がりや径違いのジョイントなど、様々なヤクモノも揃えてある。それらを組み合わせてなんとか修理できた。「材料代だけでも払わしてくれんかの」とイタルさんは言うが「いつもお世話になっているし、困ったときはお互い様ですから」と断ると、お酒を1本持ってきてくれた。
先日から時々通っている群馬町の不思議な酒屋「鈴木酒店」(僕らはここで無添加国産ワイン「いづつワイン」/長野塩尻産をいつも入手)で、おまけで「玄米で仕込んだお酒の酒粕」というのを貰った。甘酒にしたり粕汁にするのもいいし、天然酵母が生きているのでパン種にもこのまま使えるという。
そこでさっそく相方がパン種を仕込んでいた。「いた」と書くのは、種の発酵まで時間がかかるからで、瓶の中に砂糖水、小麦粉(地粉)を少し入れて、囲炉裏端でゆっくり温めたり、夜は毛布につつんで布団に入れたりしていた。もちろん生きているので蓋は密閉しないでおく。フツフツとかすかな音をたて膨らんできたところで、本格的に小麦粉と合わせ、それをまたボールに入れて、囲炉裏端で温めるとさらに塊は膨らんでくる。それをオーブンで焼くわけだ。しかしパンって手間がかかるよね。
さて、僕らは囲炉裏を始めて以来、今シーズンなんとまだ「マッキー君」に火を入れていないのだった。囲炉裏だけで十分暖かく、薪が節約できるし、囲炉裏ひとつで様々な料理がこなせるからだ。そこでマッキーはパン窯オーブンに改良したのであった。天板を開け、鉄棒を2本渡して、そこに鋳物の灰皿(廃品がアトリエの床下にころがっていた)を載せただけ。最初、ロストルの上にゴトクを置くアイデアがあったのだが、この灰皿をみて鉄棒渡しの方法が閃いたのだ。
で、パン生地も出来ていよいよマッキー始動か? という直前にまたまた閃いてしまった。それは
「囲炉裏パン」
ほら、焚き火料理で棒にヘビのようにパン種を巻き付けて焼くのがあるでしょ。囲炉裏の火があるわけだからそれで出来るよね。さっそく大きめの手製竹串に巻いてやってみた。ねじりながら成形して一本につないでしまい、包丁でフランスパン風に切れ目を入れる。灰に突き刺して火にかざす。ときどき方向を返しながら、うっすら焦げ目がついたらできあがり。
天然酵母・地粉のパンが、囲炉裏で簡単にできてしまった。イタルさんから貰ったウイスキーのお湯割りで、そのふっくらと香ばしい囲炉裏パンを食べる。う、ウマイ!! マッキー、すまん!