増穂講演、1日目


山梨県の増穂町のイベントで記念講演や紙芝居ライブ、間伐講習会をやることになって、その下見に行った話しは4/9のブログに書いた。今日はその講演当日である。明け方4時にアトリエを出発し、雁坂峠を越えるルートで増穂へ向かった。峠の手前のダム工事が、凄まじい光景を見せている。「付替市道塩沢工区工事」という看板をみつけたが、一つの沢の道の付け替えだけでその工事額は1億円に近い。その道の上には線香林が立ち上がったままだ。しかも「この工事看板は埼玉県産間伐材を使用しています」という語句が・・・なんとも悲しい倒錯ではないか。

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さて講演場所は山の中、町が主催する「増穂ふるさと自然塾」という自然体験・研究・研修施設だ。その開塾イベントということで、町長さんをはじめ内外の重鎮たちの挨拶が終わった後、「新しい森づくりを考える」という僕の約1時間の講演が始まる。聴衆は町の関係者と、東京環境工科専門学校の学生さんたち(彼らはここを実習地に通っているという関係で、課外授業の一環でやって来たのである)。それに一般の人。その中には、前に鬼石に鋸谷さんをお呼びしたとき山梨から来てくれたことがある、県の林務職員の二人と再会した。明日の間伐実習は学生さんたち中心で、午前中の講義があってダブるので、初日は町の関係者に向けてのメッセージ、という気持ちで話を展開した。

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今回はスライドをたっぷり用意し、その映像に沿って話しを進めていった。スライドは2部構成で、前半は現在の人工林問題とその解決策としての鋸谷式間伐について。後半は神流アトリエでの暮らしぶりについて。トップ画像は上のタイトルだが、次には増穂町で下見のときにした撮影した富士山の写真。ところが、その裾野には広大なヒノキ線香林が広がっているのを、下見の帰り道に発見してしまったのだ。そんな導入部でスライド3枚目にはそれを映す。

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以下、風雪害被害地の写真や理想の人工林、自然林の混交林などの写真を見せながら、鋸谷式間伐の核心である「形状比」「限界成立本数」「胸高断面積合計」の話に移っていった。が、この部分は準備不足で解っていただけたかどうかは自信がない。が、鋸谷式の強度間伐の本数がこのような前提のもとに決められていることは感じてもらえたと思う。

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ここで時間をオーバー気味になってしまい後ろから指示が飛んだのであわてて(僕が持ち時間を勘違いしていたのである)、後半を急いで映しながら話をまとめた。しかし、アトリエの風景や暮らしぶりはなかなかウケたようだった。講演が終わる町長さんが「実は私は40年林業事務所にいたことがあるのだが、先生の話を聴いてあらためて間伐の重要性を教えていただいた。ありがとうございました」とにこやかな顔で話して下さった。

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その後、すぐにホールに移動して紙芝居をやった(すでに地元に小中学生が座って待っていた)。ここで、あらかじめCDでタマリンソングを練習しておいたという東京環境工科専門学校の生徒さんたちが、なんとバックコーラスを振り付けをしながら演じてくれた。僕らは当日その話を聞かされて、学生たちの嬉しい加勢にもちろんOKしたのだが、音合わせする時間はなかったからぶっつけ本番、彼らの声と動きを背後に感じながらギターを弾いていた。感動の盛り上がりであった。

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▲元画像はこちら

こうして僕らは無事役を果たし、午後の記念植樹に参加。閉会となった。その日の泊まりは施設の中のできたてのコテージをお借りした。地元のスギ・ヒノキをたっぷり使った建物の中には、真新しい設備や調理器がそろっていて快適だった。電磁調理器まであるのには興ざめしたが、木造を露出する建築だと消防法の関係で裸火は使えないらしい(この法律、悲しいぞ!)。 さっそくひと風呂浴びて、町に降りて食材を仕入れる。まずは前回の下見のとき教えてもらったミート高橋の馬刺。生でも美味しいが、さっと焼くとまたちがった旨味が現れる。地元の赤ワインと絶妙の組み合わせである。

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お腹も落ち着いた頃、前記の林務職の二人NさんとTさんが遊びにやって来て、Nさんはなんと食材持参で料理まで作ってくれた。東京環境工科専門学校卒で自然塾施設の管理者であるKさんもやって来て、その夜は「現在の荒廃林の間伐は、”収量比数”の考え方では対応できない」というディープな林業ネタから「山梨の果樹園は農薬をどれぐらい使っているのか?」という怪しい地元ネタまで、多いに盛り上がりつつ更けていったのだ。


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