林道取材11.(宮域林/補足)


宮域林のように大径材を早くつくるための施業(受光伐=強度間伐)をすれば、結果的に開いた空間に広葉樹が繁茂し、台風にも強い環境林ができる。が、そのような木は当然ながら年輪は粗くなる。となれば構造材として実用にならないのではないか? という疑問も生まれる。

宮域林では年輪巾の異なる供試体(30cm角、年輪巾大中小それぞれ50本)によって曲げ強度試験を行なっている。その結果は以下の表の通りである。

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年輪が粗いからといって、構造材の強度を問題にするほどの差はないのである。意外にも、あまりに少ないこの差は何なのか? 年輪差が4倍も太いのに、曲げ強度はわずか3パーセント、ヤング率にしても11パーセントほどしか低くならない。おそらく、木の健康度が上げられるのではなかろうか。間伐の行き届いた木々は幹に陽が当たり、風であおられることで丈夫に育つのである。また下層植生が豊富で、腐葉土が豊かになるために、木が健康に育つ。健康なモノが強いのは生命の法則であろう。

ただし、年輪巾が広ければ、柾目板などでは工芸的な美しさに関しては問題があるかもしれない。が、『神宮御杣山の変遷に関する研究』の中で木村政生氏はこう書いておられる。

「式年遷宮の御造替については将来とも集成材の使用を考慮に入れるべきではないので、御造営用材の規格に定められた用材を確保することが先決であって、約500年~600年後の用材に関してはさておき、超大径木の供給が困難な時代に向かう時に当たって年輪幅の拡大は問題にするべきでなく、また、棟持柱等円柱として使用する用材に関しては年輪はほとんど表面に出ないのでこれに関しては問題にならない」

間伐遅れの線香林を伐採して年輪を観察すると、一番外側の年輪が密になっていて1cmの中に10本の年輪がみられることも稀ではない。しかし、ここは白太の部分(辺材)であって木材として耐久性に欠ける部分である。「密な年輪の木がいい」などというのはおかしな言い草であって、大切なのは赤身(芯材)の部分を増やすことであろう。

※『神宮御杣山の変遷に関する研究』木村政生著/国書刊行会 12,600円は現在、アマゾンやジュンク堂書店などからネットで購入できる。日本の森を学びたい人に、ぜひとも一読をお勧めする。


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