今日は桐生骨董市の日。桐生の天満宮では毎月第一土曜日に骨董市が行なわれる。北関東一の骨董市とも言われ、県外からも古民具・骨董商が集う。
旧アトリエ時代もこの市を見るために通ったことがあり、めちゃ安く手に入れた絹の羽織は室内の仕事着として愛用している。群馬という場所がら山道具も多く、ナタやまさかりなどはいいものが出る。で、今回は桐生市民として初めての骨董市を、楽しみに待っていたのであった。
骨董市で本気で買い物する気なら、朝一番に行かねばならない。良いもの、掘り出し物はすぐに売れてしまうからだ。私たちは8時前に出発した。天満宮には車で10分もかからない。が、すでに駐車場は満車に近い。
まずゲットしたのは銅のヤカンである。3,000円の値がついていたが、「雨だからまけときますよ」(謎?)ということで2,500円でゲット。
次に箱火鉢。もちろんケヤキ、しかも取っ手と回り縁は黒柿(くろがき)がはまっている。これがなんと3,000という値札。たしかに欠けや割れが多少あるのだが・・・。
私たちは骨董的価値を求めているわけではなく、実用品として使いたいだけなのだ。昔のものは素材が本物で長年のふるい分けを経てカタチが洗練されている。使いやすく、美しい。そして使えば使うほど渋くなっていく。だからいいのだ。
着物を物色中のYKに相談し、また戻ると、店のおじさんは私の手元にある銅ヤカンを指差し、「それをのっけるちっこい五徳をつけて3,000円でいいよ、雨だから」(謎???)。というわけで箱火鉢もゲット。さすがに火鉢を片手に買い物を続けるわけにいかず、一度コペンのトランクに積みに行く。YKはすでに着物の帯ふたつ4,000円分を3,000円に値切って買っていた。
あとは軽く流して、この近所の友人宅へご挨拶へ行こう、などと思っていたのだが、YKはふたたび着物を執拗に探し始める。なにしろ桐生はかつて「西の西陣、東の桐生」といわれた織都である。絹織物の着物がザクザクと出ているのだ。
時間をもてあました私は、小さなお堂のような建物に立てかけてある物品の良さに誘われて、足を運んでいった。天満宮の境内は、鳥居のあるお宮の入り口から細長い経路がありそこに露天商の島が続いているのだが、モノの飾り方はいろいろなのである。
そこで、黒光りする餅板を見た。餅をのして切ったりするケヤキの一枚板である。手斧(ちょうな)の大胆な削りが黒光りしているが、その裏側は木の素肌のクリーム色で餅の粉がまだ着いていた。他の客とのやりとりで、「新潟の秋山郷(あきやまごう)で仕入れた」という店主の声が聞こえてきた。裏表の色があまりに違うのは、餅切りに使う側を内側に立てかけていたからで、裏側の黒は囲炉裏で燻されたのである。
その隣に並んでいた囲炉裏用の「自在カギ」に目が吸い寄せられた。これまで、骨董屋の自在カギをどれほど見てきただろうか。それはどれも、これ見よがしで、睥睨で、いかにも骨董でござい、というやつで、おそらく骨董の自在カギを買うことはないだろうなと、私はずっと思い続けていたのだが、その自在は、魚の顔が優しくて、クルリと曲がった鉄の留めが可愛かった。
どこの誰が作ったのか知れないが、重厚さと軽快さのバランスがよく、かつデザインにモダンな香りがしたのである。自在カギは家の中心であり非常に重要なものである。山の民「サンカ」は自在ガギを「天人/テンジン」と呼び、一種の神器として分家するさいに重要な贈り物とした。
骨董の自在カギは1万円を下ることはまずないが、店のおじさんは「雨だから8,000円でいいですよ」と言うのだった(もう雨は上がっているんすけど/謎?????)。
高い買い物だが、これを新たに鍛冶に頼むとすると、こんな値段ではできないだろう。というわけで思いもよらず、自在カギまで買ってしまったのである。
その他、溝鉋や火箸など小物も少し追加購入。そして今回の一番の目的である鉄の吊り鍋も買うことができた。
では、それらの戦利品を写真で紹介しましょう。
その後、友人宅にご挨拶して「有隣館」の展示を見に行く。レンガ蔵ほかいくつかの蔵を改装してギャラリーにしている桐生随一の文化スポットである。そこで、製材・木工商の「藤生(ふじう)木材」さんが家具の個展をやっていた。藤生さんは忍木菟屋のすぐご近所で、先日、囲炉裏部屋のスギ板材の見積もりをお願いしていたのである。
んんん、そこでまた吸い寄せられたテーブルがあった。桐生梅田材のスギ一枚板のテーブルである。しかも全部赤身。私たちのカフェのコンセプトにぴったり。思い切ってこれも買いました(55,000円/いいのだろうかこんな安くて・・・・)。
藤生さんはまだお若いが、家具造りだけでなく、一級建築士も持っておられ、大工仕事にも精通されているようである。地元の左官さんの情報なども訊いた。いろいろ忍木菟屋改装の相談にのってもらえそうだ。
その後、栃木の佐野までまわって漆喰の製造メーカーを訪ね、カタログを仕入れて帰還。
夕刻はIさんが訪ねてきて、夕食後に新宅のほうのオーディオを聴かせてもらった。が、途中でカミナリが鳴って、土砂降りのなかIさんの車で帰る。パソコンをつけっなしだったからだ。ここ、足尾山塊から鹿沼にかけてはカミナリ銀座で、毎年ルーターやパソコンがかなり壊れるらしい。
なんとか無事で、これを書いています。
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