床板を張り始める


囲炉裏部屋改装中。

腰板を張り終え、土壁と床板が接触する部分には古い戸板を張って腰板とした。これでようやく床板と壁との接合部が決まったので床板を張り始めることにする。

板は自分で山から伐りだしたスギ丸太をクサビで半割りにし、それをヨキ(まさかり)でハツって厚板に仕上げたものだ。原木は直径20cm程度のいわば間伐材であるが、秋切りして葉枯らしし、皮むき丸太のまま自然乾燥したので、中身の色つやはすばらしく良い。厚みは平均で4cmほどあるだろう。

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チョウナ仕上げのような波状のハツリ跡そのままも面白いか? と思ったが、多少はカンナをかけて平滑にしないと、拭き掃除で雑巾の傷みが早いし、yuiさんが

「女性のお客さんがストッキングをひっかけたりするとマズいよ」

というので、貼りながらカンナがけも同時進行することになる。次の板にくっつく部分もカンナで凹凸を取って隙間ができないようにする。

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「ほんざね」とか「あいじゃくり」のような、一般に薄い板のフローリング材にみられる接合部の加工はしない。板自体が分厚いのでたわむ心配もないし、さねの部分の板幅が取られるのがもったいない。

止め方は根太にビス打ちとした。根太のレベルそのものにゆがみや誤差があり、厚板の完全に平らや平行ではない。だから板と根太の間に木っ端を差し込んだりしつつ水準器で水平を見ながら調整し、ビスを打つ。先にくりこぎで大きめの穴を穿っておく。あとでビス頭を木で埋めて隠す予定なのだ。

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散乱する板材。ヒマをみつけてはこつこつと丸太から板を採っていたのだった(こちら)。おかげで、私の腕は右のほうが太いのが見て解るようになってしまった。

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建築歴史家で現東大教授の藤森照信氏が、自然素材で自邸をつくる過程を紹介した『タンポポ・ハウスができるまで』(朝日新聞社1999)を読んだ。この中に直径30cm、長さ1mのサワラの丸太を割ろうとする著者の記述がある。藤森氏は鉄工所でハンドルのついた大きなナタを特注する。そして背をハンマーで叩いていくのだが、刃は食い込むのだがもちろん割れない。

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そして昔に屋根用こけら板の板割りをしたことのある職人さんが助けてくれ、丸太はいとも簡単に割れたのであった。それはもちろん、私が『山で暮らす 愉しみと基本の技術』で書いた方法とまったく同じである。

しかしなにより私は、信州の田舎で育ちで薪割りの経験さえある藤森氏が、そして和洋を含んだ建築研究の権威でもある藤森氏が、日本建築の根源でもある丸太割りを知らない、ということに衝撃を受けた。この本の箇所を最初は笑いながら読んでいたのだが、やがて深いため息をつき、背中が冷たくなっていくのを感じた。

私が割った丸太は長いもので1.8m。直径20cmの間伐材から平均4cm厚で15cm幅の板が2枚採れる。厚みがある杉板はとても暖かい。いまの日本に多くみられる「間伐遅れの山」のスギ材は、白太の部分の年輪が密なので、乾燥で痩せて隙間ができることも少ないだろう。

この方法を、今の建築家たちがどうして思いつかないのだろう? ノコのなかった古代の木造建築には多用されたはずなのに。


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