環境評論家、船瀬俊介さんの講演会が桐生市文化会館(シルクホール)の会議室で行なわれた。私は20年ほど前、東京に住んでいたとき生活クラブ主催の講演会(内容は合成洗剤とせっけんのこと)で船瀬さんとお会いしたことがある。船瀬さんがちょうどそのとき出版されていた『自然流だし読本』(1990農文協)という本に私のイラストを使っていただいたことがあるのだ。
その後の船瀬さんのめざましい活躍は周知の通り。今回は住宅ネタでの講演であり、会場へ行ってみると「愛工房」の伊藤さんも居られたのでさっそく先日の取材のお礼と、桐生で乾燥機導入先を探していることをお伝えする。
さて、講演が始まった。健康住宅に関する講演なのだが、まず健康の三大原則基本が話される。それは「医」と「食」と「住」。それはどの一つが欠けてもダメなのだが、この三つの知識のどれかが欠けている人が多い、と。
まずは「医」
・毎年34万人がガンで亡くなっているが、実はその80%(27万人)は抗がん剤等の副作用で亡くなっている。
・医者自身は抗がん剤の危険性をよく知っていて、271人の医者に「貴方がガンになったら抗がん剤を打ちますか?」と聞いたところ、270人の医者が「ワタシは打たない」と言ったそうだ(笑)。
・人間は生まれた時から毎日5000個のガン細胞が生まれているが、ナチュラル・キラー細胞がそれを壊しているので健康が保たれている。
・ナチュラル・キラー細胞は「笑う」ことで6倍増える(血圧も下がる)。コンクリートのオフィスビルから木のロッジに移動したたけで1.52倍増える。
・ガンを治すには1)笑う、2)食事を改める、3)身体を温める。
・薬は飲まない方が良い。降圧剤を飲むとボケ老人に、コレステロール降下剤(メバロチン)で寝たきりに、血糖値降下剤で脳梗塞になる。薬が次の病いを引き起こしている。日本の寝たきり老人は欧米の3~4倍いる。
・医学の始まりは150~200年前のドイツ。これは戦場の医学だったので慢性病は治らない。慢性病は身体の自然治癒力を発動させるしかない。
・病気は「食べるな!」「動くな!」「寝てろ!」で治す。野生動物はすべてこれ。
次に「食」
・1977年のマクガバン上院議員の報告(5000ページのレポート)。5高食品がアメリカ人を早死にさせている。5高とは1)高カロリー、2)高タンパク、3)高脂肪、4)高精白、5)高砂糖。これをやめて食事の量を半分にするべき。
・これに食品産業やマスコミが猛反発。日本ではまったく報道されない。利権団体が情報をつぶしにかかる。
・肉をやめれば血圧はすぐ下がる。歯を見れば食べるものが見えてくる。肉1:野菜果物2:穀物豆5。
・沖縄は長寿県だったが現在は男性は26位に転落、女性は1位のままだが、これは母ちゃんが粗食でお父ちゃんにいいもの食わせているから。
そしていよいよ「住」
・住まいの原則は1)ナチュラル、2)シンプル、のふたつ。「このシルクホールはぜんぜんナチュラルじゃないしシンプルでもない。年間の維持費が300億だそうですね」と、困惑顔の船瀬さん。
・「休む」という字は人が木に寄り添っている。木で暮らさないと休まらない。forest=森、も同じ。
・戦後の建築がおかしくなった。化学素材とコンクリート。たかだか200年の歴史のコンクリートは9年早死にする。
・コンクリートの箱と木の箱に同じ数のネズミを入れておくと、木のほうはコンクリートの12倍以上の生存率。しかもコンクリートの箱は生き残ったメスが自分の子供を食べた。オスは仲間をかみ殺した。
・コンクリートは冷輻射で立っているだけで熱が奪われる。コンクリートとスギの床をくっつけた場所にネズミの群れを放すと、入れたとたんに全部がスギの床のほうに移動する。24時間観察してもコンクリートの床には一匹も1歩も行かない。
・安藤忠雄の打ちっぱなしの家で大阪大生が親殺しをした。ローンが月25万だったそうだ。アンドウのコンクリート打ちっぱなし住宅は「殺人住宅」。
・田中角栄33歳のとき(1951年)公共建築に木造禁止令が法律化。どんな山奥の市町村でも役場がすべてコンクリートに。コンクリートや鉄鋼の利権がからんでいる。
・木造校舎がなくなることで登校拒否児童が30年で8倍に。→ネズミの実験をみれば当たり前だ。
・これからの文明は木造文明。ヨーロッパではすでに急速な木造化が始まっている。20階建ての木造ビルもできている。
・鉄筋コンクリートは重く(木造の5倍)手間と時間がかかる。木造はシステム化(結工法)すればスピード早い。
・東京の表参道に木造のオフィスビル計画がある。
・コンクリートの寿命50年。木は1000年。漆喰は5000年。
「愛工房」の木材乾燥について
・45度という低温乾燥。酵素は48度で死ぬ。含水率6~7%まで下がる。スピートは従来の高温乾燥(190度上げる釜も)の15~30倍の早さ。高温乾燥でも10%を切ることは難しいのに。
・現在の乾燥は97%が高温乾燥。
・愛工房の低温乾燥だと、リグニン(ねばりの成分)、防虫成分。防カビ成分、癒しの成分、すべてが残っている。高温乾燥だとこれが全部出てしまう。釜の床はドロドロ。パサパサの木なので防カビ剤やシロアリ剤が必要。
・木材の3大プロジェクト1)愛工房、2)リグニン、3)パルプ。リグニンは接着剤になり鉄の代替品にもなる。鉄より硬いので鉄鉱石がいらない。パルプはものすごく水を消費するが、愛工房の乾燥材なら1/10で済む。
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次に(株)シェルターによるKES工法のプレゼンテーション。特殊金具によって集成材を組み合わせて行く工法。桐生でも100棟ほど建っており、うどんやなど店舗も多い。
これが愛工房のスギ材である。軽い。暖かい。硬い。香りがいい。ツヤがあってしっとり。先日、森林ボラ時代の林業関係者に愛工房の話しをしたところ「低温での乾燥は絶対にありえない。まちがいなくどこかがマユツバ」と完全否定。この桐生講演も教えてあげたのだが。まあ、鋸谷さんのときも、四万十式作業道のときも、いつも周囲はそんな感じだったが(笑)。
民主党政権の快挙「公共建築物木造義務化へ」。大ニュースになっていいはずなのにマスコミは普天間で叩くことばかり。
船瀬さんの本はよく読んでいるので話の9割は既知。しかし残りの1割に凄い情報があるのが講演会のいいところで・・・。
なんだか、とてもすっきりしたのであった。
「先生、またイラスト使ってくださいよ」
「おう、よろしく頼むよ」
ということで会場を後にしたのでした。