高知県四万十町(旧大正町、H18年合併改変)へ林道取材へ出発。主役の田辺さんとは3年ぶりの再会となる。鋸谷さんと同じく、この田辺さんの林道づくりはなんとしても世に大きく登場させるべきであり、連載後は単行本化を目指すわけだが、内容が「林道」だけに読者が限られるという懸念もある。しかし環境親和型の林道は、木の売り買いや森の管理しやすさだけの問題ではない。
1)林道づくりを考えることで、西洋由来の土木技術(自然をねじ伏せ、コンクリートで固めてしまう)を根本から考え直すきっかけにもなる。それは日本古来の土木技術を見直すことにもつながる。そして日本の山の特質が見えてくる。
2)山林で使う道具やエンジン機器、軽自動車や林業作業機械まで含め、これらの改良の余地がたくさん残されている、ということが見えてくる。それを解き明かすことにも大きな意義がある。
3)高密度作業道をつくることで頻繁に山を行き来するとき、環境親和型でありながら鋸谷式とはやや異なる新しい林業のセオリー(技術・管理手法)が生まれるのではないだろうか。鋸谷式間伐は、どちらかと言えば林道がなくてもできる荒廃林を最短距離でローコストで最良の山に持って行く手法であった。一度間伐すれば10年は放置できる、という伐り方だ。しかし、作業道があるなら、同じ環境親和型林業とはいえ、管理の仕方は当然変わってもよいのである。
林道というと、環境保護論者には環境破壊の代名詞のように聞こえるものだが、この「森を良くする田辺林道」をするとき、目からウロコが落ちる人がたくさん現れるだろう。