フジとクヌギ


というわけで薪づくりである。今年伐ろうかと考えていたやや太めのクヌギが敷地にあるのだが、かなり太いフジがからみついている。そのフジは、伐ろうと考えていたクヌギの隣にあるやや小振りのクヌギの根元から立ち上がり、その小振りのクヌギを介して絡み付いている。

すなわち、目的の「やや太めのクヌギ」を伐り倒すためにはフジを伐らねばならず、小振りのクヌギも伐り倒さねばならない。大小のクヌギに架け橋のように絡んだフジは、位置が高くて切断がままならないからである。

ところが、ここでもう一つモンダイがあった。小振りのクヌギの側から立ち上がったフジは、「やや太めのクヌギ」を介してさらに上部にあるシラカシ大樹にも届いているように見えるのだ。この3本を伐ったとしても、シラカシに絡み付いているとすれば倒れない可能性も出てくる。

念のため、「やや太めのクヌギ」に梯子をかけ、牽引のロープをかけておいた。まず大蛇アナコンダのようなフジを根元から切断。そして小クヌギを伐る。案の定、倒れない。そして、ぐっとテンションのかかった「やや太めのクヌギ」を伐りにかかる(危険である)。

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キノコのちから


木の「伐り旬」というものがある。木材を使う場合、その木をいつ伐り出すか? で、その材の質はずいぶん変わってしまうのだ。木も竹も、材として使うなら伐るのは「秋」が最適といわれている。もっと幅広く表現するなら、お盆過ぎから年内まで。すなわち9~12月、といっていいかと思う。

この時期は木が水を吸い上げない、活動が止まった時期だからで、8月のお盆の時期なんてまだ旺盛に木は水を吸い上げ成長しているんじゃ? とか、1月なんてまだ冬だから伐っても大丈夫では? などと思うかもしれないが、木(植物)は人間の感覚よりも常に季節を先取りしているのだ。

アトリエに来て最初の冬、’05年の1月9日にクヌギの大木を伐った。そのとき、すでに水を吸い上げており、切り口からしずくがポタポタと落ちた話しは前のホームペ-ジにも書いた。

それを仕立てた薪は、やっぱり虫食いが酷かった。1年目の夏、薪置き場にたくさんのカミキリムシが来ていた。キイロトラカミキリが非常に多かった。秋頃から薪の中でカリカリと音がする。中枝などは穴だらけで地面に叩くと折れてしまうほどだった。これには驚いた。

そして薪2年目の今年、第二回目のカミキリムシ様、飛来。産卵を経て、またまた幼虫がいるのであった。ノコギリで薪を切ってみるとまるでレンコンのようになっている。これじゃ薪としての歩留まりは半分以下だ。クヌギは本来、硬い木で、マサカリを跳ね返すほど稠密な材質である。が、穴だらけにされたその穴には、カミキリムシの幼虫の食いカスや糞が詰まっている。薪だってくすぶる。

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ピチット


『現代農業』連載の本描き、今回のテーマは「石垣」。はやく終わらせて町の用事を片付けようと思っていたのだが、手こずる。まったく毎回毎回たいへんなのだこの連載は。でもこの連載をまとめた単行本はきっと社会にインパクトを与えるものになるだろう。そのとき、鋸谷式間伐はさらにメジャーになるはず。

Y嬢旅先の北海道からクール宅急便が届く。運んできてくれた宅急便の運転手はお姉さん(ちょっと太め)でハアハアゼイゼイ「ふだん歩かないからね」。中に生ニシンも入っていたので、ネットで「ピチット」を注文した。浸透圧を利用し、食材から水分と臭みを抜くという薄いシート状の製品だ。これでニシンのマリネを作りたいが、到着が間に合うかな? ともあれ山暮らしで動物性タンパク質を最良に保存・生かすためのツールにちがいない。
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