田辺市中辺路に位置する滝尻の崩壊地である。熊野古道の重要地における深層崩壊として数々の紙面を賑わせ、田辺市の報告書の表紙にもなった崩壊地である。
一目してかなり異常な線香林だが、今回はこの山に入って実際に本数や樹高や胸高直径、樹齢などを調べてみようというのである。
計測器は4mの釣り竿、それに直径巻き尺。それから正確な樹高を測りたいので30mの巻き尺も用意した。
半径4mの円内本数を20倍すると1ha当たりの本数になる。
(図版は鋸谷茂・大内正伸『図解 これならできる山づくり』より大内画)
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さて現場だが、工事現場の下から登頂するのは危険をともない困難と判断し、上の集落から道を探してみるとあっさりと現地に到着した。というのも、集落が沢から水を引いている管理道があったのだ。
さらに、驚いたことに、この沢から崩壊現場まで切り捨て間伐(それもけっこう強度な)が為されていた。切り口をみるとごく最近の仕事である。だから、崩壊編場までそま道が付けられていたのだった。
ただし、さすがに崩壊地のキワは間伐せずに残されていた。
地すべりセンサーが取り付けられている。
対岸の崩壊キワには木が倒れかかっている。風などで次々と倒れているらしい。私たちもあまり崖に接近するのは危険だ。
古い切り株があり、これでも過去に1度は間伐を入れているようだった。
新しい切り株を撮影する。
年輪を数えると樹齢は50年ちょっと。
古い時代に間伐した伐り株はこんな感じになっている。伐り株も明瞭なので、釣り竿を回せばかなり正確な植林本数を出すことができそうだ。
これはさらに古い時代の伐り株だが、おそらく人工林化する前の広葉樹の株だと思われる。
続く。