「藤尾さん」の愛称で親しまれる藤尾八幡神社は、高松の市街地からも近く、社寺林に豊かな照葉樹が残されている。その面積約37haはこんぴらさんのある象頭山に次ぐ。この神社は拝殿はなく標高136mの藤尾山お山自体がご神体だそうだ。アラカシ,ツブラジイ,クスノキ,イチイガシの大木がある。
林内はフカフカの土に落ち葉がびっしり堆積している。下草はほとんどないが、中層木がよく繁っている。
「原生的・手つかずの森」などと各解説に書かれてはいるが、平野部に最も近いので、過去には一部薪炭林として使われたこともあっただろう。だが薪が不要となった近年40~50年は、まったく人の手が入っていないはずだ。
香川ではシカの被害はここまで及んでいないようだ。だから、この林床の状態が、この地の原生的な照葉樹の普通の姿と考えてよいだろう。
かつて、人工林の間伐問題が広く知れ渡ったとき、荒廃人工林には下草がなくなることから、このような照葉樹林でも下草のない状態が悪いことだと勘違いされ、ボランティアグル―プなどが森林整備と称して広葉樹の間伐やボサ刈り(中層木やツル植物の伐採)をやった時代があったのである。
この森には下草がないが、土の中にはもの凄い数の土壌動物が生息しており、落ち葉を分解しならが保水力の極めて高い土壌作りを行なっている。また土壌内に膨大な数の微生物がいて複合的な発酵を行なっており、草が生えない(草が必要ない)状態を作っている。
砂漠のような荒廃人工林の土壌とは似て非なるものである。