長尾寺は琴平電鉄長尾線の終点「長尾駅」から歩いてすぐ。高松の隣、さぬき市にある。87番なので、すなわち結願の札所「88番大窪寺」の一つ手前の寺、歩き遍路にとってゴール目前の寺ということになる。
山門の中の二王像は木彫に漆塗りのようである。珍しい。
境内は広い。お休み処・お食事・参拝用品売り場があったりする。夕刻なので閑散として、お遍路さんはわすか数人。
落ち着いて読経できます。
大師堂。
立派な相輪が付いている。
境内に静御前の剃髪塚(ていはつづか)がある。
静は舞の名人であった母、磯禅師から舞を教わり、宮中で雨乞いの舞を披露した際に後白河天皇より”日本一の舞姫”と賞賛される。
母、磯禅師が東かがわ市小磯の生まれだった縁から静が晩年を過ごしたとされる旧長尾町や三木町には史跡が数多くあり、その一つがこの「剃髪塚」。
静は奈良・吉野の山中で義経と別れた後、京へと帰ったが義経恋しさあまり病気を患い、郷愁を感じていた母と共に讃岐の地へ帰ることとなる。
母と共に信仰の旅へと出た静は長尾寺へと辿り着き、住職の宥意和尚から「いろはうた」などにより無情さを諭され、二人は得度した。
静は宥意和尚の一文字をもらい「宥心尼(ゆうしんに)」、母は「磯禅尼(いそのぜんに)」となった。
その際に落とした静御前の髪が剃髪塚に納められているとされる。
開創1200年の記念印にも静の舞のデザインが。
門の前にお遍路さんのための民宿がある。ここで英気を養って、明日の結願に備える(けっこうハードなコースらしい)。
山後の寺を表す丁寧な案内図があった。青鬼君は香川県の元祖ゆるキャラである。
静由来の史跡は他にも「静薬師堂」「鼓渕」(こちら)、静の位牌と墓があり鐘楼に舞姿のレリーフのある「願勝寺」などが近くにある。全国にいくつか静伝説があるが(たとえば福島県郡山市や群馬県前橋市や淡路島)、ここが終焉の地であった可能性が高い。
まあほとんどのお遍路さんは「剃髪塚」に気づかず通り過ぎてしまうのかもしれない。なにしろ明日がフィナーレだから。