23年ぶりの海外旅行・スペイン〜/バルセロナ2日目その2・ミースとガウディ


スペインの古典絵画も僕は大好きでベラスケス、ゴヤ、エル・グレコなどを見るのも楽しみにしていたのだが、調べてみるとカタールニャ美術館はどうも絵画が少ないようだ。おそらく中は広大で時間を取られそうなので止めることにした(やっぱりスペイン絵画を見るならマドリッドのプラド美術館なんだろうな)。というわけで近くにある近代建築の遺産、ミースのバルセロナ・パビリオンを見に行くことにした。地下鉄で移動して歩き始め、途中で凱旋門を通過。なにかスペインらしい色彩。



凱旋門はパリだけでなくヨーロッパ中にある(のちにこの旅の中盤、マルセイユでも見ることになる)。

バルセロナはガウディの建築があまりに有名なため、ミースのバルセロナパビリオンは案外知られていない。ミース・ファン・デル・ローエは20世紀のモダニズム建築を代表するドイツ出身の建築家で、ル・コルビュジエ、フランク・ロイド・ライトと共に、近代建築の三大巨匠といわている。

このパビリオンは1929年のバルセロナ万国博覧会でドイツ館として設計されたもので、いちど撤去されて再構築され、今は「ミース・ファン・デル・ローエ記念館」となって有料公開されているのである。

壁の直角部や曲面がまったくないスラブと石の板と鉄骨柱、ガラスで構成された空間。

ここにつくるならミースがガウディを意識しなかったはずはなく、ある意味すべてがガウディ調の反転のモダン・ミニマリズムでまとめられたとも言える。

ここで生まれたのがミースの名作イス「バルセロナ・チェア」。

さすがに座り心地は抜群である。

ミースはもともと石屋の倅として生まれ育ったそうで、ここには特徴的な斑紋の石・・・壁=縞瑪瑙(オキニス)/床=大理石(トラバーチン)が使われている。

抽象がかったブロンズ裸像。

今では現代建築の敷地に当たり前のようにセットされている生態的には使い道のない浅い(飾り)池。1929年(日本では昭和4年)、このミースのパビリオンがはしりだったのかもしれない。

ミースの象徴ともいえる十字柱。

ショップの中にその構造物が展示されてあった。最初の撤去のときのものだろうか。ともあれここで生み出されたユニバーサルスペースという概念が、のちのファンズワース邸など数々の傑作を生み出すことになる。

▼ショート動画をどうぞ
https://youtu.be/3pZTrnkg4AU?si=UHLK5yGGd-UbegxQ

明後日にはここからフランスのモンペリエまで長距離バスに乗らねばならない。幸い、小川さんはフランス南部から近似の路線を使っており、バス乗り場が近いというのでバルセロナパビリオンを見る前に案内してもらった。その後ふたたび地下鉄でカタルーニャ広場方面へ戻り、市場へ昼を食べにいく。

カタールニャ広場から海へ向かう目抜き通り「ランブラス通り」は歩道や中央分離帯に出店が多数出て観光客で賑わっていた。

その筋にあるブケリア市場にある海鮮レストランに入る。といってもこの季節、店内で食べている人はほとんどいない。皆、外席でビールやワインを飲み交わしている。スペイン産の生ハム「ハモンセラーノ(しかもイベリコ豚のもの)」、小さなイカのグリルもニンニクが効いていて美味!

そしてパエリア。さすが本場。サフランを使った本物。エビや貝の旨味がすばらしいこと!

市場の中もまた興味津々だった。香辛料の店もありもちろんサフランも多数売っている。ピスタチオやアーモンドの混ざったナッツの小袋を購入した。

食後、歩いていける距離にガウディの作品「グエル邸」があったので見に行った。入り口で荷物のX線チェックがあるという厳重さである。外からの見た目は渋い建物だった。

並びはなくすんなり入れた。ファサードから鉄の装飾オブジェが凄まじく、圧倒的なオーラを放っている。

かなり豪華な邸宅。グエル氏は民間人でありながら伯爵号を授与されるほどの成功を収めた実業家で、ガウディの良き親友であり、最大のパトロンであった。

ガウデイは30歳でこの建築に着手し、4年の歳月をかけて完成させた。ガウディの初期の傑作であり、またその後の数々の作品のエッセンスが凝縮された作品ともいわれている。各所に見られる曲げ鉄(ロートアイアン)加工が言語を絶するすばらしさである。

金属板を加工して用いたドアの装飾。ガウディの父親は銅板を叩いて鍋を作るような職人だった。幼少のガウディはそんな中で空間感覚を養っていった。

木組み(彫刻)の天井と窓、ステンドグラス。

中央はカテドラル様になっており、パイプオルガンも設置されている。

気の遠くなるような天井の装飾。

木彫りと金箔による家具類の装飾。

暖炉が多数ある。

が、ほとんど燃やされた形跡がない。

最上階には天窓が多数あって明るい。このフロアーが展示・解説スペースにもなっている。H鋼なども使われており、古典的な中に近代技術が同居しているのが不思議な感じだった。

屋上も見ることができる。

これがまたなんとも・・・。

石やタイル装飾で彩られたこの尖塔群は、暖炉の煙突なのであった!

避雷針と風見鶏がわりにアイアンデザインのコウモリが飛んでいる。なんとユニーク、なんと優しい・・・(昔のバルセロナでは、コウモリが街のシンボルだった)。

ガウディはどの建物でも煙突にかなりこだわりを持っており、一説に中世の昔から魔物が家に侵入する際に煙突こそが一番の弱点・・・そんな意識から来ているのだという。

それにしてもすべてに超絶な空間感覚だ。凄まじいまでのきっちりとした作り込み、過剰なのに構造美に溢れているのは、ガウディがその形態を自然から学んでいるからなのだろう。ただただ圧倒された。大工の小川さんも感嘆することしきりであった。建物の裏側もぜんぜん手を抜いていない。

おいガウディ! そこまで曲げなくてもいいじゃないか! と言いたくもなる(笑)。

この階段の細部のディテール。ミースの「神は細部に宿る」という名句を捧げたくなる納まりである。

最後はコロンブスの記念塔まで歩き地中海を見る。

再びランブラス通りを戻ってレイアル広場のカフェで休む。

街路樹のヤシがあるところがやや南国のスペインそしてカタルーニャだ。プケリア市場の食堂で流しのアコーディオン弾きが ベサメ・ムーチョを歌っていのを思い出した(僕は帽子にコインを投げ入れた)。

明日からは僕一人となる。大工の小川さんは薪ストーブや薪ボイラーの輸入代理店も展開しており、東欧での商談に旅立つ。


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