豊島へ「大地の再生」下見に


豊島を訪れたのは2012年だからもう11年前になる。本の取材を兼ね、折りたたみ自転車をのせてフェリーに乗船した。瀬戸内の島はどこも石垣の景観がすばらしいのだが、とくに豊島には独特の石「豊島石」を産する。その石のことを知りたいと思った。江戸時代にはその石でくり抜きのカマドが作られているのだ。7月の晴れた日に自転車で島をぐるりと回った印象的な旅であった。

「豊島石」の島へ渡る(2012.7.1)

豊島は産業廃棄物の不法投棄問題で物議をかもした。311をきっかけに群馬から高松に越して来た僕はそんな問題を知るよしもなかったが、県の住民の間では有名な話らしかった。旅をしたこの年、 その汚染土壌を他県の民間業者が処理する計画が明らかとなり、こちらでも住民の反対運動が起き、結果汚染土壌の県外処理は白紙になるというような、そんなニュースを通して豊島のことを知った。

今回は「大地の再生」の依頼が来たのだった。豊島には香川県に唯一存在した乳児院「神愛館」があり、その跡地がゲストハウス施設として一部再生利用されているが、周囲の庭は未整備のままなのだ。今回は車でなく身ひとつでフェリーに乗った。港に担当者のOさんが車で迎えに来てくれ、施設まで案内してもらった。鉄筋コンクリートづくりの大きな建物だった。

内部の広間には暖炉(しかも3面開口型だ!)があって驚いた。

隣の棟にあるゲストハウス。敷地をざっと見たあと、ここでメンバーと大まかな打ち合わせを。

昼食を食べに行く。円筒形の建物はアーティスト・横尾忠則と、建築家・永山祐子による「豊島横尾館」の一部だ。この11年のブランクの間に建築家・西沢立衛による「豊島美術館」もできているのだが、どちらもまだ中を見たことがない。

その隣にある古民家のカレー喫茶「異邦人」へ。

地元の野菜カレーを。

食後、もういちど敷地へ。気になったのは建物敷地の沢筋が海へ出ている場所である。皆で行ってみることにした。

そこは小さな流れが海岸のきわで伏流しており、漂流ゴミが溜まっていた。小豆島プライベートビーチの沢の姿にそっくりだった。「大地の再生」的には、この出口が最重要な場所になる。

その後、豊島の名所案内を。まずは以前も訪れたことがある「唐櫃(からと)の清水」。島でこれだけ豊富な湧水は珍しい。

周囲に見られる独特の石垣。見事な矢羽積みになっている。

唐櫃の清水のすぐ近くの敷地に「豊島ウサギニンゲン劇場」がある。主宰するアーティストご夫妻も今回のメンバー。

近くにある彼らの自宅にも招かれて歓談。その後、車に便乗して島の展望台へ。

島のほぼ中央に位置する壇山は標高340m。豊島は大綿津見神(海神)豊玉彦を祀る島で、壇山の「壇」とは神を祀り儀式を行う場所であった山頂付近には樹齢100年から250年前後と見られるスダジイの群生林が見られ、麓にはクヌギ林が広がる。

展望がすばらしい。八栗と屋島がこの角度で見れる・・・このアングルは感動モノである。

もう一方のピークにある展望台。好天に恵まれた下見日であった。

その後、時間が余ったので一人で敷地内を探索してみた。気になったのは建物に隣接する遊水池のような窪地である。下まで降りて、水系を確かめてみた。

沢筋を大きな建物がふさいでしまい、その大雨対策として作られた遊水池のようにも見える。いずれにしても敷地再生を考える上で重要なポイントになる。

夕刻のフェリーで高松へ帰還。

ちょうど日没の時間を船上から。ワークショップは12/5-6で行う予定。

豊島はアートの島でもある。今後がちょっと楽しみ♬


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