高松市西植田の森林公園「ドングリランド 」は「NPOどんぐりネットワーク」のフィールドである。香川県の主導で始まったこの会の歴史は古く、かく言う僕も森林ボランティア時代にこの会と関わりを持ったことがあり、2001年ネットワーク主催の「森の文化祭」へ、タマリン紙芝居で参加した。かつてのパートナーyuiさんとはこのとき出会ったのだが、当時彼女はこの会の副代表をつとめていたのだった。
この頃その活動や施業に疑問を持ち始めていたyuiさんに、東京からこんなメールを送ったことがある。
どんぐりネットワークの活動は、森林問題の啓発の糸口をつくったということでたいへんエポックな活動でしたが、これからはいろいろ問題も出てくるでしょう。
まず、なぜ広葉樹を植林しなければならないか? ということです。よほど条件の悪いところ以外は、日本の山は勝手に木が生えてくるのですから、広葉樹の植林を美談にしてはいけないと思います。一般の人は山に広葉樹を植えることが山を守ることだと勘違いしてしまう。何か目的がある場合や記念植樹の場合と一般の植林は別に考えねばならない。ここをメンバーの皆さんが理解して乗り越えていくことが大切だと思います。
もう一つ、里山の管理はある種の公園化を目指す手法と、もう一つ「誘導伐」によって山を仕立てていく方法があると思います。前者は中川重年さんらが得意のものですが、それは定期的・持続的な手入れが必要で、全ての里山や自然林にあてはめることはできません。
むしろ、これからは後者のほうが一般的になっていくでしょう。里山の公園的な管理は人工林よりもはるかに難しいのです。ここも押さえておく必要があるでしょう。
(「日の出日記」2002.8.6/その1)
けっきょくyuiさんはどんぐりネットワークを離れてスギ・ヒノキの人工林問題へ向かうことになる。あれから20年が過ぎ、「ドングリランド 」の森は荒れ果てていた。なにより大きな広葉樹が枯れ始め(ナラ枯れ)、根倒れした木が多数見える。
沢筋も荒廃しており、泥に埋まっている。
そこにできたイノシシの掘り跡はグライ土壌の典型的な土色で、指でその土をすくって鼻を近づけ嗅いでみるとドブのようなにおいがする。それを現在の副代表であるMさんにも確かめてもらった。
もはや森は誘導伐(択伐・間伐)だけではとうてい救えない状況なのは明らかだった。僕のアトリエやGomyo倶楽部にも視察に来た彼女は、この森のすぐ下で「森のようちえん」を運営している。
ビジターセンターで打ち合わせし、ここで「大地の再生」ワークショップをシリーズ化してぜひやってほしいと頼まれた。県はほぼ撤退して予算はなく、とても重機が入るような工事はできない。広大な敷地を月イチの作業で回復できるわけはないのだが、まず現実と解決策を知ってもらい、仲間や後継者を増やすところから始めるしかない。
これも亡きyuiさんの導きと考え、引き受けることにした。