徳島県剣山の山上集落の民家におじゃまする機会を得た。そこは周囲でもかなり高標高の、一宇の最上部にある家で、大きな茅葺き民家である(だいぶ昔にトタンがかけられている)。
太い梁はアカマツ、柱はヒノキとクリが使われている。縁側の厚板はサクラ。建築年は明治よりも前で、おそらくすべて地場材が使われている(なにしろ車道がなかったのだから)。
囲炉裏で昔の料理をごちそうになった。田楽である。
味噌に砂糖と山椒を入れたタレを塗って焼く。
豆腐。これは下の集落の食料品店で手づくりのものだ。
コンニャクも自家製。食べればその歯ごたえと食感で解る。
黍(きび)餅とよもぎ餅。
中はやはり地場産の小豆。その香り、たまらない。群馬での山暮らしがよみがえってくるのだった。
極めつけは「そば米雑炊」。そばの実をゆで、殻をむき、乾燥させたものを雑炊のように仕立てて食べる。青物はイワタバコの葉を茹でたもの。
お隣は廃屋。石垣が立派。蕎麦などを干すための穴空き支柱が立っている。ヒノキは後から植えられたものだろう。陽当たりはもっと良かったはずだ。
角の算木積みがすばらしい。城郭のような反りがある。これを昔の人は人力だけで積んだのだ・・・。
付近の山を歩いてみると、確かにクリの木がけっこうある(イガが落ちているので存在がすぐに判る)。クリは針葉樹の中に点在させると通直に育ち、用材として使いやすいものになる。
アカマツの巨樹(奥大野のアカマツ/四国1位、全国15位 推定樹齢不明/県指定天然記念物)を見に行った。
対岸の山は人工林に覆われているが、拡大造林前はいちめん雑木林で、炭やきや焼き畑が行なわれていた。付近の国有林には直径が3mもある大木もあったそうだが、ほとんど伐られてしまった(パルプ材になった)。現在は作業道を入れ、間伐が入っている様子がここからでも解る。しかし、今年崩れた場所もある。
シカの被害が深刻で、間伐して生えてきた草木がすぐ食べられてしまうそうだ。
ご主人はすでに山を下りて、麓で暮らしながら、ときどき果樹などの収穫や家の管理に上がってくる。集落の戸数は全盛期の1/5に減り、増える気配はない。
食べきれなかった田楽や餅や焼き芋、それに干し柿と山水をペットボトルに入れて土産に戴き、山上集落を後にした。
明日はお遍路の続きに行く。