次の目的Y邸へ移動する。先ほどの東慶寺と同じどちらも鎌倉市内だが、流域がちがう。前者は江ノ島を河口とする境川。こちらは由比ヶ浜と材木座海岸の間を河口とする滑川。滑川は鎌倉市十二所を源流とする全長5~6km程度の2 級河川だが、鎌倉の市街地を流れ、鎌倉市に河口があるという意味で象徴的な川である。
有料駐車場に車を止め、道の橋の上から滑川を眺めてみる。水はそれほど濁ってはいない。ハヤ(ウグイ)とコイが泳いでいる。
滑川の由来「滑り(なめり)」とは平たい岩の上を滑るように舐めるように流れる沢を意味する。Y邸に向かいながら川沿いに道を進むと、コンクリートの護岸が終わり、まさに岩盤の上を流れる渓相になる。
Y邸へのアプローチ。コンクリートの踏み石の両側は「有機アスファルト」が施されている。
Y邸内部の庭、ここを大地の再生の手法で造成中。
建物の奥に滑川が流れている。
足元はコンクリート護岸だが、対岸は自然の岩盤である。見学者の一人が川底の岩陰にこぶし大もあるモクズガニを見つけ、僕はカワセミが眼下を飛翔していくのを目撃し、その翡翠色の閃光が目に焼き付いた。
隣接する茶室を見せていただいた。
待合。
土壁。錆びの班が入っている。
雨樋・落とし筒も竹。苔が自然のいい色を出している。
この仕事に関わる中で矢野さんは、滑川で川遊びをしている子供たちに胸打たれ、鎌倉市長宛てに大地の再生による川掃除を提案する手紙を送ったという。帰路、夕暮れの滑川に短い竿を持つひとりの少年を発見。
「ザリガニ釣りなの?」と上から声をかけると、なんと・・・
「そこの穴にウナギがいるんだよ」との返事(!)。
後日調べてみると、滑川には淡水性エビのヒメヌマエビ(Caridina serratirostris )が神奈川県下で唯一生息するそうで、他にも伊豆半島以東に分布する在来の邦産淡水性 エビ類全種を産するという(※)。鎌倉市では古くから開発が規制され、かつ下水道も整備されて雑排水の流入が少なく、堰堤などウナギやモクズガニの遡上をじゃまする人工構造物もない。
※:鎌倉市滑川におけるヒメヌマエビの記録/丸山 智朗(神奈川自然誌資料 (33): 41-44, Mar. 2012>
施主のYさんは庭や建物に関して「若い人たちが自然のことを学ぶ場にもなってほしい」というようなことをおっしゃっていたので、やりがいのある楽しみな現場になりそうである。
東慶寺の宿舎に戻り、掃除をしてZOOMの先生方と感想会をして視察会議は終了。今日も皆と連れ添い大船で食事。またしてもヴィーガン食の禁破り(笑)で「高橋」という店で「焼きあご塩らー麺 」を食べる。
帰りは矢野さんの車で打ち合わせしながら横浜駅まで。22:15発、寝台特急サンライズ瀬戸で高松へ。すでにみどりの窓口は閉まっており、駅員さんに聞きながら券売機でチケットを買う。
券売機では個室は買えないんだそうで、雑魚寝席だったが、ガラ空きだったのでこれもまた佳しw。