食事と飲み物がよかったせいかこのハードな2日間を通過しても、朝早く目覚め、身体が元気である。男木島3日目の朝、僕と大地の再生メンバーの提案で、有志により朝食前に宿泊地ドリマの上の周囲の草刈りや水路掃除をすることにした。
過疎化により放棄地の水路はヤブにふさがれている。それを刈り出して開いていく。
石垣は伸びすぎた草の刈り込み、根石周りの除草と空気通し。
風みちとしても重要な縦水路のヤブの開削。車の入れない男木島では、上部に行くほど廃屋が多いので、このような手入れが早急にされるよう自治体などに提案していく必要がある。
小一時間も作業したのだが、ここで僕は蜂に刺されてしまった! 一方やっちゃんは倒れてきたバールで足指を打撲! 男木島最終日の洗礼である・・・。
瀬戸内の柑橘と夏野菜の朝ごはんの後、小豆島在住のSさんの紹介で今日だけ参加のTさんが一番のフェリーで到着し、石垣を見たいというので2人を伴ってもういちど見に行くことにした。
朝の光線で石垣はまたちがう表情を見せる。石垣下の畑地には刈り草のグランドカバーをかけておいたが、根石の前50cmほどは石と土との境界が見えるように土だけにしておいた。この根石ぎわの土はとても重要で、ここが耕作で浅くなってしまうと根石が動き、石垣が崩れやすくなる。
石垣のノウハウを知らないIターンの人たちがここを畑として使うなら、そういった知識を共有し、土を盛り直すなどメンテナンスを施していく必要がある。また上部はもう2段ほど積み残しが出ているので、丁張はそのまま残しておいた。
宿に戻ると、皆が楽しそうにおにぎりを作っている。今日は基本的に自由日、これからタンク岩に登り、男木島灯台を周遊するのだ。
ドリマの上からタンク岩の山頂までは距離にして1.5㎞程。高低差にして130mほどの軽登山である。各自、飲み水やおにぎり、泳ぎ道具や着替えなどを持って出発。灯台へ続く道の途中に分岐点があり、そこから急登の階段が山に続いている。
僕は男木島灯台へは何度も行っているのだが、まだ最高峰であるコミ山やこのタンク岩には登ったことがない。道は案外しっかりしており、途中にいくつもの石積みが作られ、小さなため池まであった。昔は島の頂上付近まで畑があったという
説明看板が出てきた。
(タンク岩の)周囲には、柱状節理の崩壊物の堆積した岩海があり、その面積は三十三アールに及び、本県では他に例がない。
とある。讃岐平野のおむすび山の上部には玄武岩が露出し、ウバメガシに覆われた場所が多いが、柱状節理が見られるのは女木島と男木島しかない。
その崩壊物の重なりが見えてきた。ここからはこの岩の上が登山道である。
山林が途切れ、一気に明るくなる。
11:30、タンク岩到着。なるほど、小型ながら見事な柱状節理だ。写真ではわかりにくいが、菱形の岩塊の反対側(写真左側)には剥がれやすそうな6角柱が地中から伸びる形で束になっている。おそらく初期は菱形岩と一体化していたと思われ、その中央部が長年の間に崩れて、崩壊岩の帯を作っていったのだろう。
それを島の人たちは海まで転ろげ落とし、船に積んで港まで運んだのだ。玄武岩が冷え固まったのが今から1,500〜700万年前、その石積みが最初にされたのが数百年前。そして昭和の初期くらいまで、宅地や段々畑を増やすために、石垣は少しずつ増えていった。
そして時代は変わって過疎で崩れ始めた石垣を、現代の僕らが積み直している。昨日積んだ石の中にここからやってきたものがある。その原点が見れて嬉しかった。
振り返れば瀬戸内の絶景! が、木陰がない上に岩の崩落が恐い。おにぎりは灯台まで降りて食べることになった。
下り道、石を観察する。柱状節理はマグマが冷却固結するときにでき、玄武岩質の岩石によく見られるが、安山岩や凝灰岩のものもある。道道に写真のような6角柱の岩がたくさん転がっている。ツラの平面といい控えの長さといい、このまますぐ積み石に使えそうである。
尾根沿いの別ルートで灯台に降りる。灯台といえば岬の岩塊の上に立つものが多いが、ここには砂浜がある。
とはいえドン深で潮の流れも速く、ここでの遊泳は危険である。目の前は国際航路でもあり貨物船や大型客船も通過していく。
それでも子供たちは黙っていない。おにぎりを片付けるや海に飛び出していく。
岸辺だけで水遊びするよう見守りながら、少し奥のワンドの方へ移動することにした。ここなら大丈夫。僕も海パンになって少し沖に出て泳ぐ。昨日よりは透明度が高いが、水中眼鏡を借りて岩下を見たが魚は少ない。
早めに切り上げて15時のフェリーで高松港へ、そして車を乗り合わせてアトリエへ。囲炉裏暖炉に火をつけたい見学者のために窓を全開にし、クーラーも併用して温度を下げる(笑)。
皆に買い出しと料理をお願いしたが、ヴィーガンのAKOちゃんも来たので野菜料理も何品かつくり、囲炉裏で鍋を使ってお米も炊いた。セロリと畑のメークインをビタ鍋で無水調理した「ジャガイモとセロリのブレイズ(丸元レシピ)」が好評でAKOちゃんが喜んでくれた。
というわけで宴は大いに盛り上がり、僕はギターでタマリンソングまで歌わされ(石垣積んだあとだってのに!)、結局この夜は14人のお泊まり。アトリエ宿泊者数最高記録であったww。
4日目に続く。