室戸岬へ向かうこの辺りは平地が少なく、海から直接山が立ち上がっていて、その山裾に人家が張り付いているという場所が少なくない。その山の林相は常緑樹が多く、紅葉の気配はほとんど感じられない。
そして道端にアロエの花が咲いている。
25番「津照寺」のある港町、室津に着いたときは風が強まっていて、防波堤に波しぶきが上がっていた(でも釣りをしている人がいる)。魚屋の店先にシュモクザメが、ごろりと横たわっている。
水切り瓦のある土佐漆喰の蔵もボロボロに・・・
地元の人たちには津寺とも呼ばれて親しまれる津照寺は、入口からいきなり急階段を上がって行く。
竜宮城にも似た山門は鉄筋コンクリート製で、鉄柵の向こうに小さな仁王様。
中に階段があり、ちゃんと撞ける鐘があることに驚いた。
全部で125段の階段を上がりきると本堂。やはり、鉄筋コンクリート製だが、このシチュエーションでは妥当と思われる。
振り返る木々の間から青い海が見える。マティスの絵にこんな構図があったような。
ご本尊は「かじとりじぞう」の異名を持つ延命地蔵菩薩だ。「今昔物語」にその霊験の話が書かれているそうだ。
大師堂は入口横にあるので再び階段を下りていく。
私たちの他には女性二人組しかおらず、納経を済ませてトイレを借りて戻ると、私たち以外に誰もいなくなっていた。お遍路ブームの今年に、こんな情況は大変珍しいことである。
風の強さがより深い静寂をもたらした。
堤防に行って釣りの獲物を訊ねるとグレ(メジナ)狙いであることがわかった。今日は湊内にまで濁りが入ってダメだ、とのことだった。