水路にかなりの勢いで水が来ていた。田んぼに水が入る。ここは水路網の最終地点で取水口は鶴川支流の仲間川にある。そしてこの田んぼ脇を通って鶴川へ流れ落ちる。昔なら上流域の田んぼに水を取られて苦労するところだが、今は減反で水が余っているのだ。だから潤沢に、しかも一年中この水路の水が使えるという。
実験苗代を見にいくと昨日よりも明らかに大きく植物たちが変化しているのがわかる。
水棲昆虫も動き始めていた。ガムシの仲間である。
次の田んぼへ水を入れながら、矢野さんが重機で田おこしをしていく。一度耕運機をかけた場所に雑草が生え始めた土。そこに耕運機の深さよりも、重機のバケットはやや深い穴をランダムに掘る。それで水が土に浸透しやすくなり、水比重の高い土ができる。野生状態のイネが好む湿地状態を作る。
水が入ってなれた田んぼにレーキで代かきを行う。
畝間が短いのは、土が多かった、つまり水深が浅かったので一枚の田んぼの中央に畝を作ったのだそうだ。それだけではなく、畝の上から長竿に鎌などを取り付けて雑草取りができる。
そもそも水比率の優勢な田んぼでは陸の雑草は生えにくい。初期除草の手間が少なくて済むという。
田植えはきれいなグリッドで植えなくていい。それが自然のイネの姿だ・・・と矢野さんは言うのだが、初期除草がいらないのならそれもOKだ。
しかし、ほとんどの参加者が田んぼ初心者のようであった。戦争に敗れて引き上げてきた日本の若者たちは、田舎に帰れば皆田んぼができたという。子供の頃から結(ゆい)で鍛えられ、田植えや水管理や土の動かし方を熟知していたのだ。いま、SNSを駆使して世界中の情報と繋がることができる彼らだが、コメの作り方は身体の中に入っていない。
矢野さんは鶴川につながる水路・水脈溝を開削する。
水の入った田んぼにカルガモが飛来した。
桑の木の下でお茶タイム。
風が通り、水が入るとトンボがやってくる。これから田んぼ周辺にはメダカなどの魚たちもやってくるだろう。
田んぼからの水入れは微妙な調整が必要だ。入り過ぎれば田んぼの水深が深くなって田植えがしづらい。休憩中に水が落ちてしまい逆に水が少なくなりすぎた。
再び水が入り、今日の分の田植えが無事終わった。
矢野さんは風の草刈りで周囲の見通しを良くしている。水が潤沢に使えるのでここに池を作ろうという話も進んでいる。こうして田植えにまつわる3日間の上野原講座が終わり、最後に田んぼ釣り場がつながったビオトープ・親水公園のような未来の姿が見えてきた。
倉庫に戻り、感想会。私は東京駅からまた夜行列車で高松に戻る。玄米と野菜とカレーの夕食をいただいて上野原駅へ。