下巻読了! やまだ焼き


丸山健二の『月と日と刀』が止まらない。上巻500ページ超を残り少なくなった頃、郵便受けに下巻が届く。上巻は千葉の古書店から、下巻は大阪の古書店から別々の注文だったのだ。

下巻は帯付きだった。装丁も美しい。しかし下巻のほうは柔軟剤(?)ファブリーズ(?)の臭いが付いていて困った。ページをめくっているうちに薄らいではきたが。

内容は予想以上にもの凄いスペクタルなものだった。時代設定が良い。平安〜室町期の設定でないとこの感じは出せないし、刀というテーマもびりびりと生きてくる。

それにしても作者の人間への深い洞察と、それを描くボキャブラリーは大変なものだ。開高健どころではない。殺戮シーンも多いのだが、それと対になる叙情も満載で自然描写も美しい。

下巻を読み始めたらもう止まらなくなり(笑)、席を立って料理を作るのも面倒になり、電話で「やまだ」のお好み焼きを注文して取りに行く。やまだは閉店の8時だというのにほぼ満席で席に止まったまま、みな酒をがんがん飲んでいるのだった。

やまだ焼きは鶏肉のいろんな部位が挟み込まれた、でっぷりとしたお好み焼き。外はカリカリだが厚みがあるので焼くのに20分くらいかかる。

ビールと白ワインで片付けて・・・再び下巻へ。リクライニングチェアで読んでいたら途中眠ってしまい、時計を見ると11時。残り、下巻半分、どうする?。読むっきやない!

最後に主人公の絵師としてのリアリティをどうまとめるのだろう? という心配はまったくの杞憂だった。胸に落ち、そして美しい叙情たなびくラストシーン。権力の醜さを語りながら、それでも人の本性の美しさを忘れない。芸術の本質と崇高さをここまで語れるヒト、現代日本に他にいるだろうか?

柏艪舎から出ている「完本 丸山健二全集」の【第5回配本】に『月と日と刀』が全4巻で収録されており、同社のwebで34ページまで試し読みができる。この文字組はまるで詩文のようだが、全集では過去の作品すべてをこのスタイルで新たに組み直しているようだ。その理由について

濃密な文体ゆえの工夫であり「普通に組むと圧迫感がある。それでも読みこなせる人は少ないでしょうが」。気楽にページを繰っても、なかなか頭に入ってこない。乗りこなせない。車に例えれば、ハンドルにもアクセルにも遊びがゼロのレース車だ。「文学の鉱脈は無限だが、岩盤は硬い。俺の文章はそこを掘るための削岩機ですから」(毎日新聞インタビュー2015/左右社Web)

と答えている。確かに全集の文字組みは難しい語彙もスッと頭に入る。

※作者不明『日月四季山水図 六曲一双屏風』室町時代/ (天野山金剛寺蔵)は2018年に国宝指定になったそうだ。


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