昨夜は講座の後「おくとろ温泉やまのやど」を目指し、ぎりぎり入浴時間に間に合ったものの、なんと定休日だった。それで今日は湯の口温泉を目指すことにした。まだ暗い中、テントの中でヘッドランプをつけて講座のメモをパソコンにテキスト化していると、ウグイスとカジカガエルの大合唱が始まった。早朝出発。途中、丸山千枚田に立ち寄った。Kさんは軽トラななので、私のXVのカーナビで先導する。
これはさすがに凄い。千枚どころか実際には2,200枚あるそうだ。
石垣は何度も補修した跡がうかがえる。オーナー制度や会員制にしてが外からの応援も利用しつつ保全管理しているそうだ。
湯の口温泉はひなびた共同浴場であったが、3年前に地元材で新築された。
熊野のスギを使ったすばらしい施設になっていた。ペダントライトに京都のkotoriを使っていたりしてセンスいい。もちろんお湯も良かった。源泉掛け流しで湯量も豊富なのである。
熊野本宮へ。Kさんが熊野古道を使って拝殿へ行く道を教えてくれた。
何年ぶりだろう。相変わらず気が高いところで、頭がふわぁぁ〜っとしてくるのだった。
しかし、外人観光客がものすごく増えている。九州の太宰府は中国人が多かったが、こちらは西洋人が多い。石段ですれ違うたびに、過度な香水の臭いでやはり頭がふわぁぁ〜っとしてくる(笑)。
熊野古道館。? 隈研吾っぽいな、と思ったら、設計は香山壽夫。若き日にルイス・カーンの薫陶を受けた人で、カーンに関する著作を何冊か読んだことがある。
さて、今日の本命は、林業作業員だったのにいきなり本格蕎麦屋を開業してしまったN君の店を訪問することだ。
懐かしいな、以前泊めてもらった別棟が蕎麦屋に変身している。
さらに地元材や古材などを使って東屋が伸びている。写真を撮り忘れたが、尾根筋なので景色がまた素晴らしい。
メニュー。やはり一本勝負でもりそばの大盛りを。
突き出し。蕎麦の揚げたもの。海藻とカイワレ。
日替わりの山菜セットをサービスしてくれた。これが、気合が入っていてすばらしい。真ん中上はおかきではなくて蕎麦を使ったうなぎもどきである。そういえばN君は山伏の修行を積んでいて、精進料理に詳しかったのだっけ・・・。
蕎麦が来る。国産の蕎麦を自家で石臼挽き、十割、そして熊野の水だもの・・・まずいわけがないが、問題はつながっているか?
合格。味も上々。ただしそばつゆにまだ迷いが感じられるな・・・。
案の定、「鰹節がイマイチうまく削れなくて、大内さん教えてくださいよ〜」というので、車に積んであった削り器と本枯れ節を取りに行った。
「え、キャンプで鰹節削ってんですか?」
「うん、この頃はぬか床も持参してんの♬」
という僕にぶっ飛ぶ2人に(笑)、鉋や研ぎの重要性や、本枯れ節の削り方のコツを伝授した。N君は山伏修行を経て法螺貝も得意なんだけど、お客様をお見送りするとき必ず法螺貝を吹いて差し上げるんだそうだ。
しかし、人は変われば変わるものだな、ちょっと安心したよ。まあ僕も大変化中なんだけど。熊野本宮近くで本物の蕎麦と山菜・精進料理を食べたい方、行ってあげてください。味は僕が保証します♬
ここでKさんと別れ、講演や取材でお世話になった中辺路や田辺の知人宅に顔を出す。yuiさんを亡くしたことでずいぶん心配していただいて、気になっていたんだ。
滝尻の大崩壊地の工事はどうなっているだろうか?
荒廃山林はそのままに、巨大なコンクリート堰堤が完成していた。ここ一カ所だけで工事費は33億2千万円が投入されている。
最後はみなべのKさん宅に立ち寄って甘夏をどっさり頂く。Kさんは関西電力の契約を切り、ソーラー発電だけで暮らしている。中の配電装置なども見せてもらった。ソーラーを始めるとなぜか電気製品が増えていくんだそうだ(笑)。草刈機もチェーンソーもマキタの電動のものだった。
さあ帰宅。どこか大阪か神戸あたりで美味いもんでも・・・と思ったが、今日中に帰るには下道に降りて夕飯をのんびり食っているヒマはない。そういえばキャンプで炊いた飯が弁当箱に残っているし。
というわけで、以前2回ほど食べに行ったことがある御坊市の有名な鰻屋「川常」に電話。持ち帰りの蒲焼きを注文しておき、店の駐車場で蒲焼き弁当を作ったのだった。
いちおうフタはしたのですが、車中匂いが大変でした(笑)。
前回の奈良の講座のときは朝帰りで日の出が見え、今回の帰り道は明石海峡大橋で夕陽が沈むのに出会った。夕陽を見ると思い出すのは夕陽が大好きだった妻yuiさんのことだ。そういえばyuiさんは名前がyurikoなのにニックネームがyuiで、その理由を訊くことなく話すことなく逝ってしまった。僕に残してくれたメッセージなのかい?
淡路SAで、暗くなってきた海を見ながら弁当箱を開けた。
入りきらないので2段なのである。これがもう物凄く美味しかったのだ!
今回の旅、さすが熊野縦断というべきかXVは890㎞も走ってしまったけど、鰻が効いたのか眠くなることもなく、高松までノンストップで無事帰還した。