屋久島・大地の再生講座(4)/結(ゆい)が教えるもの


前夜は主催者の勧めで矢野さんと同じホテルに泊まった。フィールドを離れたら離れたで、また面白い話が聞けるものである。大学のとき歩いた沖縄のヤンバルの森が、30年ぶりに歩いたらものすごく荒廃していた。それを、現地の役人と歩いたのだが、役人はまったく気づいていなかった、と。

田んぼは、水を溜めるだけでなく、ゆっくり、程よく流しておく・・・それだけで稲の生育が劇的に良くなる。また、ため池は最高の水脈装置 である・・・というような、なんともエキサイティングな話が飛び出してくる。

前日は参加者が解散した後も、矢野さんは真っ暗になるまで重機を動かし続け、スタッフも振り回されたようだが、そんなコワモテの反面、話してみるとお茶目な一面も持っている。仕事を終え、スタッフの車に同乗して入りに行った尾野間(おのあいだ)温泉で、

「矢野さんの話からすると、自分の本に少し間違ったことを書いちゃったなぁ・・・」と私が言うと、

「そんなの、こっそり直しちゃえばいいんだよ」などと悪ガキにようにつぶやいて、風呂場の皆を笑わすのだった。

午前中は「風の草刈り」をしっかり学ぶ。風の草刈りは風がやっている草刈りを手本にする。草刈りは根元から切るのが普通だが、風に揺れて曲がるところから刈る。すなわち高刈りになる。が、一律に切るのではなく、遠目で見て草の集まりが流線型やかまぼこ型になるように、つまり風がスムーズに流れるように全体を整える。

かつてのおばあさんの草刈り 払いをやることで、最小限で 手作業で。

生き物同士のシグナルを受け止める。

なぜこのような刈り方をするかというと、刈った位置でその後の草の伸び方が違うからである。根元から刈れば、草は勢いを増して伸びようとする。すると根が伸びて粗根になる。高く刈れば根は細根に分岐して、草の成長が落ち着く。草がそれほど伸びなくなり、また柔らかくなる。

GW過ぎの夏の光になる前に、今の時期に「風通し改善」をやることは非常に大事な作業だ。風の流れを見て、ここから柔らかいというところ、風が最初に当たる場所、ここから切り始める。全体では目通しが効くように、沢に向かって、沢が意識できるように刈っていく。

風が均等に抜けるように、上から切る。刈った草はバラしながら周囲にまいておく。

風の草刈りをやって地形を把握してから水脈の改良。

風エネルギーに見合ったススキ(荒地)には最大限のエネルギーを与える。風は見事に植物たちを手なづける。びっくりしてこれはヤバイなと思って伸びなくなる。植物と付き合うには人目線ではなく風目線。

広大な里山を、昔の人はうまくやっていた。

私もループハンドルの草刈り機を借りてやってみた。ナイロンコードはキックバックの危険がないので高刈りでも安心だが、草のちぎれた破片が飛んでくるのでゴーグルは必携である。

仕上がりはこんな感じ。ここは昨日の敷地から一段低い駐車場わきの荒地。

その敷地では矢野さんが昨日の続きをやっていた。

こうして見ると山裾にはスギの人工林がかなり植わっている。屋久杉の巨木もいいが、この広大な人工林をこれからどう仕立てていくか、どう商品化していくか・・・これも大きな課題だろう。

昼食はまた「かもがわ」のおにぎり弁当。これ、登山弁当らしいが、めちゃウマなのである。今回の打ち上げはココで決まりだな♬

食後の談笑も貴重な時間。竹内さんは矢野さんと以前からお知り合いらしい。

午後は竹林班に入った。アペルイでは上流に元棚田だった場所を購入し、棚田を再生する動きを持っている。その場所にも矢野さん式の施行を行う。ここは沢が近く、竹林があるので、それを伐採し、竹炭(熾炭)を焼く。まずは消火用ポンプの設置。

ゴミ除けにも竹の葉を使用。

重機で穴を掘る。

スギっ葉を焚きつけにし、枯れ竹から燃やし始める。

竹の伐採は竹内さんと共同作業になった。信州を拠点としている彼は竹が珍しいようで、嬉々として作業している。私は竹林の中にあるヘゴの木にぞっこんだ。大型の木生シダの仲間で、新芽のゼンマイ部は食べれるらしい。

沢水で消化。

けっこうな量ができた。

冷めてから袋詰め。

余った手は風の草刈り。

矢野さんはひたすら溝づくり。よく観察すると、ブレーカーの先でただまっすぐ引くのではなく、ちょっとひねりを加えて、後続の作業性を高めているようだ。

屋久島はすでに新緑、クリの花が咲いている。

溝に入れる材料を揃えておく。

考えさせられたのは結(ゆい)の作業である。矢野さんたちは法人の名称に「結の杜づくり」と入れている通り、大勢での共同作業を特徴とする。この作業に報酬はない。むしろ参加費を払いながら無償の労働をしているわけである。

共同作業の何がいいかといって、まず大勢いることで様々な情報が集まる。そして各自の手わざを観察し、上手い人から学ぶことができる。その学びの幅は広く深い。そしてその人の人間としての「人となり」を知ることができ、うちとけ合うことができる。

共同で作業するとスピードはかなり早い。矢野さんのペースに引き込まれ、夢中になって仕事に没入するようになる。そして無心でやっていると五感が鋭敏になり、生き物同士のシグナルを受け止められるようにもなる。

穴の大きさは? 草の刈り高は? どのくらいやったらいいのか? やりすぎてはいけない。というバランスを、原体験のない今の若者は解らないのではないか? という問いに、「それは誰でも細胞が知っている、DNAにその情報が備わっている」・・・と矢野さんは言う。

参加者は誰しも感じたと思うが、そのパワーとは裏腹に、矢野さん言葉は詞的でありメタファー(暗喩)での表現が面白かった。本当の深い真理は詞やメタファーでしか伝えられないものなのである。

4日間フルに参加して、毎日が発見と感動の連続だった。矢野さんの理論と実践は今後の森林・里山再生に最重要のものであると確信する。その手法は誰でも小さなところからでき、発見があり、希望がある。だから、こんなに若い人たちが集まるのだろう。

それにしても、

ヒツジもヤギも虫も、風が通るように草を残す。

などと観察・発見した人がこれまでいただろうか? 私にはGomyo倶楽部、里山オーナー制度の雑木林、そしてアトリエの敷地・畑と、3つのフィールドがあるので、それぞれで矢野式を実践するのが本当にわくわくするほど楽しみである。

結局、この最終日もみっちり18時近くまでかけて講座は終了したのだが、矢野さんたちはまたしても残業していたようだ。N先生は無事下山したとラインが入ったものの、講座が遅くなったので安房までバスで来てもらい、キャンプ場で合流した。車で小野間温泉に入りに行き、その後でアペルイの食事会に向かった。


「屋久島・大地の再生講座(4)/結(ゆい)が教えるもの」への2件のフィードバック

  1. はじめまして。屋久島でご一緒させていただいた竹内孝功です。

    今日大内さんのブログを発見し、流石の文章力に一気に読んでしまいました。

    あこがれの大内さんと「大地の再生」でご一緒できるとは思わず、今回の屋久島での大きな出会いでした。(知っていたら本を持っていってサインしていただけばよかったです。

    ブログには書いてありませんが、実は竹刈りに夢中になっており、デジカメを無くし、1時間以上作業をしながら探しても見つからず、大内さんに見つけていただきました。感謝です。

    大地の再生は、農業だけでなく、林業、漁業、生けとし生けるものの生き方を再認識し、結いの作業で、体感できる講座だと思いました。

    1. 私もまさか屋久島で竹内さんにお会いできるとは思いませんでした。

      自己流で自然農を続けてきて、一筋の光明のように竹内さんの本に出会ったことを思い出します。

      落ち着いたら、ぜひそちらの教室にも行ってみたいですね、今後ともよろしくお願いします。

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