兼六園、21世紀美術館、越前そば


金沢21世紀美術館、お目当ては「池田学展」。開館時間まで1時間ほどある。それまで隣の兼六園を散策する。入園料は300円。

いきなり大きな木と苔庭。

茶室「夕顔亭」。園内に現存する最も古い建物(1774年、安永3)。

栄螺(さざえ)山。

所々に茶店がある。

木が大きい! しかもこれトチノキだ。さすが北陸。

アヤメが咲く。水は透明な流れ、これも水の豊かな北陸ならでは。

霞ヶ池と内橋亭。有名な石灯籠はこの池畔にある。

舟形をした東屋。付近は梅林になっている。

時雨亭。抹茶をいただこうかと思ったが、西洋人のご老人グループで満杯になっていたので入らず。

期待していなかった兼六園だが、この朝の散策はすごく良かった。ちまちまと公園化していなくて、木が大きくワイルドな感じ。庭園自体に雄渾な生命力が感じられる。もちろん、とてもよく管理され手入れが行き届いている。

なにより水がきれいで豊かなのが良いな・・・。季節ごとに、花の変わるごとに訪れてみたい名園。

さて、美術館だ。

池田学氏のペン画、つい最近テレビのドキュメンタリーで知った。水彩紙に丸ペンで描く細密画なのだが、それで大判の絵も描いてしまうのだ。だから時間はものすごくかかる。

その大作の一つ、2008年に描かれた、津波に現代文明が破壊されていくように見える絵が物議をかもした。タイトルが「予兆」だったからだ。まるで東日本大震災を予言していたかのようなのだ。

池田学氏はそれに対置させる再生イメージの大作「誕生」を描き始める。アメリカ、ウィスコンシン州の「チェイゼン美術館」で3年3カ月をかけて滞在制作した(そのドキュメントをたまたまテレビで見たのだ)。

完成作は今年3月、生まれ故郷の佐賀県の展覧会で公開され、美術館としては過去最多の9万5千人超という入場者数を集めた。佐賀県はこの作品を1億3200万円で購入することを決めたそうだ。

というわけで、佐賀県の次の巡回地がここ金沢なのである。

作品はやはり超絶技巧でとんでもなく細かい。だけでなくアルシュ紙にアクリル顔料インクで描かれているので非常に強い。また全体の構成も大判の画として統合されていてすばらしものであった。

ただ、ちょっと暗くてグロいので最後は見ていて疲れてくる。近年の現代美術の具象は「暗い・エロ・グロ」が多いのにうんざりしていた。だから池田氏「誕生」には期待していたんだけど、芸大でデッサンやるとみんなこの方向に引っぱられちゃうのかね。

美術館の内部は撮影OKなのでくまなく回ってみた。設計は妹島和世+西沢立衛 / SANAA。直径112.5mのガラスで覆われた円形、その上から立方体の箱を差し込み並べていった・・・というようなユニークな躯体である。外には恒久展示作品がいくつか。

館内に光庭と称した庭園空間がいくつもあり、ここにも作品が置かれている。レアンドロ・エルリッヒの「スイミング・プール」

地下からプールの下に入ることができる。

中は撮影大会の順番待ちになっていたw。

お魚になった気分になれるが、大地震が来たら恐いな。

この美術館、2004年開館だから、私が山暮らしを始めた年だ。山暮らしの拠点となった群馬県鬼石町には、同じく妹島和世の「鬼石多目的ホール」があり、この金沢21世紀美術館とほぼ同じ時期に竣工した。

鬼石多目的ホールを初めて見たときは「この静かな山間部になんという建築を建ててしまったんだ」と激怒し、中に入って閉塞感と新建材の臭いに気分が悪くなったのを覚えている。

和歌山県の熊野にある「熊野古道なかへち美術館」も狭いガラス建築で、中の書籍が日焼けしてしまいひどいことになっている。熊野というあの気候風土の中で閉塞的なガラス建築はありえない。

今回の旅で見た「すみだ北斎美術館」もまた、息苦しくなるような閉塞感を覚えた。3階からの1階への階段がないなんて、どう考えても異常だろう。だから、この金沢21世紀美術館もあまりいい予想はしていなかったのだ。

が、ここは空間がゆったりしているからか、空調が良いのか、閉塞感を感じなかった。円形という中に明快な出入り口が4カ所あり、地下に続く吹き抜けが大きく開いており、さらに光庭にも出入りできるという開放感がいいのだろう。

地下の駐車場を結ぶエレベーターはむき出しのガラスボックスに油圧シャフトで上下するというユニークなもの。マンガ的というか、こういうカワイイ感じもある意味、妹島テイストなんだろうな。

ちなみに妹島和世は独立するまで伊東豊雄の事務所に在籍した経緯がある。そういえば「みんなの森 ぎふメディアコスモス」の調度品にもこのカワイイ感がけっこうあった。

さあ、一気に四国まで帰ろう。その前にどこかで昼食だが、SAでツマラナイものを食べるのは嫌だったので、福井の武生でいったん高速を下りて「越前そばの里」へ行く。

越前そばはつけ汁をあらかじめ蕎麦の上からかけてしまうのが特徴的である。それにネギ、大根おろし、削り鰹がのる。ソースカツ丼は一説に福井県が発祥。だからこれ「ふくいセット」(ソバ大盛り)。

さすがに地粉・手打ち、まあまあイケました。そば湯もあとからちゃんと持ってきてくれた。

疲れがたまったときの一人長距離運転はツライ。眠気がきたら早めのパーキングで仮眠。それを繰り返してようやく淡路まで来る。たしか、この下りSAも隈研吾事務所の設計(1998)。

言われてみればkuma特有の形態が随所に・・・。

夕暮れてきた。音楽をラッセル・マローンから鈴木重子に変えよう。鳴門を渡って四国に。

無事到着、2,600kmの旅だった。


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