増刷のお知らせ(その2)


『鋸谷式 新・間伐マニュアル』の増刷の知らせから2日後、今度は『図解 これならできる山づくり』(鋸谷 茂・大内正伸 著/農文協2003/12/2,052円)の増刷の知らせが届いた。こちらもプロフィールを書き直すことになった。

(画像をクリックすると出版社の販売ページに飛びます)

この本も息が長い。『鋸谷式 新・間伐マニュアル』出版の翌年(2003年)、鋸谷さんとの共著というかたちで出した本だが、今回で12刷目になる。

前著はその名のとおり間伐に特化した内容だが、この『図解 これならできる山づくり』はさらに幅広く人工林再生の手法を解説している。また4章には伐採跡地を広葉樹の山に誘導する省力的な森づくりの手法も登場する。

1章と最終章にはかつて私が代表をつとめていた群馬県の「桜山きづきの森」の事例が紹介されているが、メンバーの話では当時の間伐林のヒノキはかなり大きく成長し、販売も始めているそうである。

もう一つこの本が重要なのは、最終的に大径木(樹齢80年以上、胸高直径60cm以上)を育てるという目標を設定していることである。実は、ここにこれからの日本の林業が目指すべき核心がある。

最終的な目標を大径木生産にすれば、きわめて省力的で、かつ環境的にもすばらしい山が作れるのだ。環境だけではない。大径木は製材ムダがない。板も採れるし梁や桁に使う横架材も採れる。現在の木造家屋で用いられる用材のほぼすべてを確保できる。また、小径木に比べて搬出コストも割安となる。

これまでこのような林業を構築できなかったのは、日本では40〜50年で伐採し更新する林業が政策によって奨励されてきたからである。

戦後の木材不足と住宅難で木材需要が高騰した時代があった。製材の端材・残材までが薪やオガコとして利用されるほど木材は貴重な資源だった。だから一つの山から少しでも多くの材積を得ようとした。40〜50年伐採というのは木としての成長率が最も高いところを利用する林業体系なのだ。

だが、この方法はこまめな密度管理(間伐)を前提としている。細い間伐材ですら仮設材の「足場丸太」として飛ぶように売れた時代ならいいが、外材が輸入され、エネルギー革命が起きた今はとてもそんな人件費はかけられない。

結果として日本の人工林は放置され、間伐遅れの荒廃林が蔓延し、環境的にも悲惨な結果になっている。その問題を技術的に解決しながら、未来の目標をしっかり掲げ、森と環境と木造文化をきちんと見据えているところが、この本のすばらしいところなのだ。

そうした大径材の生産は、今ある人工林を健全な森に変えていこうとすればおのずとかなう。なぜなら、二つの課題は、一つの森林管理の結果だからである。健全な森林を求めようとすれば、強度間伐で大径材の生産が目標とならざるをえないし、大径材生産を求めるなら強度の間伐が前提となり、山の健全度は必然的に増すのである。

間伐材の伐期をコントロールするのはむずかしい。しかし、主伐材の伐期(収穫時期)は、山主の意思で数十年から100年以上の時期でコントロールすることができる、”収穫の果実”をこれほど長く置いておける産業はほかにないだろう。それが山で木を育てる特徴の一つである。

そして人が生活するうえで必要な木材は必ず高く売れるときがくる。大径材ならなおさらである。つまりそのときまでスギもヒノキも元気な状態で維持しておこうと考えればよいわけである。(『図解 これならできる山づくり』2章)

1章に、旧施業とこれからの人工林施業を模式図にして比べたイラストがある。それをここにアップしておこう(クリックでポップアップします)。

これは日本の自然が教えるあるべき林業の姿でもある。いまこそ「林業の現状を知りたい、林業に関わりたい」という熱い思いを持った若い人にこの本を読んでほしい。


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