読書とかまどさん


昨日は朝から隈研吾の『小さな建築』を読み始めて面白くて午前中で全部読んでしまった。今日も朝から読書。『丹下健三 伝統と創造』。

これはセトゲー2013のとき「丹下健三生誕100周年プロジェクト」というのがあって、そのときのカタログ本だ。猪熊弦一郎やイサム・ノグチらとの交遊が詳しく描かれていて興味深い。

香川に居ると、この人たちの作品にリアルに出会えるのが嬉しい。牟礼のイサムのアトリエで片腕となって石彫した和泉さんのエピソードに、私が深く感銘を受けた草月会館の「天国の庭」のことが書かれていた。和泉さんはイサムに呼ばれてノミを持って現場まで行ったらしいw。

これもいいね。宮本亜門の文章なんだけど、

先日、偶然に庭園美術館で三宅一生さんとお会いしました。そのとき一生さんが「中学生だったときに広島ピースセンターのイサム・ノグチの橋を見て、デザインは人を変えられると信じられた。そのとき僕はデザイナーになると決意したんだ」と語っていました。

う〜ん、そうだったのか三宅一生。僕もピカソの絵を囲炉裏暖炉のわきに飾っているけど、実はあの絵は東京でサラリーマンをやっていた20代にブリジストン美術館で見て「よし、オレは画家になろう、イラストでやっていこう・・・」と肩を押された一枚なんだよね。あのとき買ったポスターを、群馬の山暮らしのとき額装して居間に飾った。それを高松まで持ってきたんだ。

僕は専門教育も受けていないし絵の世界に友人もコネも全くなかった。周囲は「お前が絵で成功するなんて絶対ムリ」と言ってた。

昨夜のテレビ「カンブリア宮殿」で伊賀の陶器メーカー長谷園のことをやっていた。僕も使っている土鍋「かまどさん」は土鍋では異例の75万台も売り上げたという大ヒット商品。だが、それを生み出す前の長谷園は阪神淡路大震災で主力商品の陶板タイルが不人気となり、18億円もの借金をかかえていたという。

起死回生のヒントは「子供の頃に食べたご飯は美味しかった」、それを土鍋で再現する。開発に4年、試作品1000個は作ったという。「作り手は真の使い手であれ!」「時代のニーズに合わせるのが真の民芸である」というアイデアマン77歳6代目の爺さんの笑顔が良かった。

自分の心の声を信じて諦めない、考え続けるうちに、ふと飛躍的な解決がみつかる、創造とはそんな過酷な作業の連続である・・・。村上龍の「だから伊藤園の土鍋にはアートの風格がある」というまとめも良かった。

それにしても、隈研吾の教養の深さと文章力には本当に舌を巻く。『小さな建築』最終章の茶室の話に引き込まれた。利休の待庵の秘密、茶室というものの構造、リチャード・マイヤー設計のフランクフルト工芸美術館に行ってみたくなった。

丹下健三の代々木の競技場は、僕がサラリーマンのとき(会社が代々木にあった)冬はスケートリンクになっていたので入ってみたことがある。その空間の荘厳さに震えたのをいまでも思い出す(隈さんが建築を志したきっかけと同じ体験である)。

だからスギとカラマツがたっぷり使われるという新国立競技場は本当に楽しみにしている。


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