からむし織を追って


ミズバショウの季節に尾瀬に行くのを考えていたのだけれど、天気がよくない。ようやく畑仕事にくぎりがついた 15日、ちょっと出遅れて地図を仕入れて秘湯へ一泊。場所は栃木県の川俣温泉。ここから翌朝、尾瀬もしくは鬼怒沼へ・・・と考えたが、ここまで来たら福島県昭和村の「からむし織の里」を見に行こうということに。尾瀬はまたじっくり計画の後、ということで。

「からむし」とはイラクサ科の多年草で、この草から麻に似た繊維が採れる。昭和村は本州で唯一、からむし織が現役で残っている。木綿が普及する以前、遥か縄文時代の昔から利用されていた植物繊維で、日本の山村ならどこでも普通にみられる。群馬の山村でもカラムシの成長は旺盛で、とくに石垣の天端にはまるで柵のようにカラムシ群落が立ち上がっているのを見る。昨年、薪ストーブで細かな雑木を燃やしているとき、カマで刈って棄てておいた乾いたカラムシが混ざっていた。その繊維を剥きとって、強靭なこと、繊維の透明感に惹かれるものがあった。どうやって糸を紡ぐのか、その布はどういうものなのか、実際にこの目でみて触れてみたいと思っていたのだ。

丸沼、戦場ガ原、光徳牧場と進んで峠を越え、延々の下り道にうんざりしかけた頃、ようやく奥鬼怒川俣温郷に到着。鬼怒川最源流の流れに突き出した露天風呂は広々として良かった。翌朝、五十里湖を過ぎて「巻き枯らし間伐」の山が現れる。藤原町の森林組合の仕事だろうか。栃木でもこの施業が普及しているようで嬉しい。

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それにしても道が良くなった(これじゃ魚もいなくなるわけだ)。南会津から峠を越えて昭和村へ。東北らしいブナの森が現れ、道々の古民家が独特の景観をみせる。しかしほとんどの家が茅葺きの上にトタンをかけてしまった。トタンの色は赤と青が多く、集落で申し合わせているのか赤は赤で統一感をみせているのが面白い。

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からむし織の里は施設がとにかく立派。郷土料理のレストランもあり、そこで軽く蕎麦などを食べてからいよいよ資料館へ。糸のづくりの道具や実際の繊維や織物製品の実物はもちろん、その製作行程のビデオもあって、からむし織りの全貌がわかるようになっている。

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ここでは野生のカラムシを一度野焼きしてしまい、そこに有機肥料を投入し、新たに伸びてきたものを採取している。帰りに実際に畑を見、そのカラムシを触ってみたが、茎がずいぶん柔らかいのだった。こうすることで、より白く柔らかい繊維がとれる(糸績みなどもそのほうがやりやすい)ようだ。カラムシだけでなくイワスゲ(ここではヒロロと呼ばれる)、ヤマブドウなどの草や蔓網の製品も販売していたが、そのデザインもなかなかだった。

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帰り道に炭酸泉が湧き出ているというポイントを地図で発見し、ちゃりんこのおじいさんに場所を聞く。どうやらメジャーな場所ではないらしい。「あんたら、どこから来たな」「群馬です」・・・んん。僕らは群馬からわざわざこの炭酸泉を求めて来たわけじゃないんだけど、まいっか。その場所は国道から外れた杉木立の中、わずかに擦れ文字の看板があり、隣は怪しげな工場。泉はあったけど、井戸の水位が深くて汲み出せない。しかも中でカエルが白い腹を見せて死んでるし・・・。ところが、隣の工場はなんとこの炭酸を瓶売りしているのだった。自動販売機にありました350円(たかくない?)。味は? 炭酸でした、確かに。

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只見町で古本と森林オーナー制度をつなげた活動を展開している「たもかく」に立ち寄り、本を1冊購入。東北は初めてという相方にハンドルをあずけ、まだ雪渓がみえる田小倉湖の林道を行く。小出から関越道で帰還。

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