芭蕉


大家のKさん宅に家賃を払いに行った。アトリエの家賃は年2回、半年分を一括払いにしている。こんな安い値段でこの敷地を貸してもらい自由にやらせてもらっているし、雑誌への連載も最新号を常にお届けしているのだが「いつも楽しみにしていますよ」などと言っていただいて感謝。お邪魔するたびにKさんの子供の頃の話を聞く。それが大変興味深い。

「農繁期には学校が休みになってね、手伝ったもんだ。でも家族総出でワイワイ仕事をやるのが楽しかったよ」

当時の収入源はカイコ、コンニャク、そしてコウゾ(和紙)。コウゾは埼玉の小川町の業者が買い付けに来たんだそうだ。コウゾの皮を剥いた芯がチャンバラに最適で、それにヒモ繊維をらせんに巻いて火で焦がし、取っ手の感じを大人が作ってくれ、そんなものでよく遊んだそうである。

「もう、あんな時代はやってこないだろうけど、でも少しは戻るといいのかな」

大家さんは教員職をリタイア。いま写真と畑が趣味なのである。

その後、先日アトリエに遊びに来たNさんの忘れ物を届けに藤岡「土と火の里」へ。立派な施設で驚いた。建物が軸組みで太鼓落としの横架材を使っている。上州民家特有の高窓(もとは養蚕のための換気窓)を再現し、そこを採光窓にしている。この鮎川の沢筋は開けて明るい。それがまた良かった。

車の件で伊勢崎へ。今日は某所から講演と講師の依頼が来た。新しい車で行けるといいなー。ここまで来たらせっかくだから「桐生、行く?」「いくー!」で、前に定休日で空振りだったアンティーク茶屋「芭蕉」へ。

建物周りからすでにオーラを発散している芭蕉。木造の外観はツタが這ってボロ、大丈夫かな・・・と心配してたけど、中に入ると、唸るようなすばらしい空間でマイッタ、勉強になった。

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その雰囲気はたしかに侘び寂びなんだけど、芭蕉というよりは「利休」、かな。店内は昭和12年からそのまま。農家の古民家を移築、再設計したものだそうだ。愛知県の足助にある「マンリン書店/蔵の中ギャラリー」を思い出してしまった。厳しい空間である。しかし、なんと温かく優しいことか。そして光(間)の構成が捉えられている。

良い建築空間というものは、素材・構成だけでなく、必ず「光」という要素が魅力を加える。高価なものは何もない。私たちの身の回りにある自然素材だけ。エネルギーを貰った。明日からまた頑張るゾ!

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