朝からメチャ暑い。コペンの車庫を見に行くと、しっかり日陰に入っていて涼しい(当たり前だけど)。よかった! ここ3日ほど、炎天下に放置せざるを得なかったから、気が気じゃなかったのだ。畑で草とりをしているとアトリエの建物の方から「電話だよー」と相方の声がする。東京のT氏から仕事の電話だったが「コペン買ったらしいっすね。モスグリーンかぁ、いいなぁ」などとコペンネタもついて出る。
今日は早めにアトリエを出発してロングドライブしよう! ってわけだったのだが、朝めしはなぜか「手打ち蕎麦」というややこしいものになってしまう。乾麺がきれていたが、蕎麦粉と出汁だけはある。ネットで蕎麦打ちの要領を調べたわけだね。でも途中でめんどくさくなり「とにかく水でねって切って茹でりゃいいじゃん?」と粉モノ担当にゴリ押し。でもやっぱり、ぼそぼそに切れた田舎蕎麦風になった。
さて、ドライブコースは中里から秩父に抜け、三峰神社をかすめて雁坂トンネルから勝沼ICに降りた。ここまでは、今月下旬の富士での講演に行くときのコース下見を兼ねている。雁坂トンネル手前で大掛かりなダム工事がされている。水没前の斜面にコンクリートの土留め工事が凄まじい。周囲は言わずと知れた間伐遅れの山、山、山だ。
コペンで高速道路の初乗り。諏訪ICで降りて茅野へ。高速でもハンドルは安定していて不安はなかった。しかしコペンのすばらしさは山道の走りの軽快さである。そして、アクティブ・トップ、すなわち電動による自動開閉で即座にオープンとクローズドに変身できることだ。
オープンカーの開放感は実際に乗ってもらわなければ伝えようがないが、どこでもオープンで気持ち良いかというとそうではないのだ。周りの景色や雰囲気、音や匂い、自然の充満がいいのであって、今の季節、暑いし、町では妙な視線も気になる。町でオープンで走るのは不快なのだ。しかし、自然の中でのフルオ-プンは本当に気持ちいい。
茅野では、マッキーとちびカマ君の故郷である茅野駅前の寒天工場の蔵の跡地を、相方に見せたかった(彼らは蔵の中に眠っていたのだ)。ところが、到着してみるとここが劇的に変っている。例のアルミとガラスとモダン建築になっており、蔵の跡の片鱗もない。いや、ひとつだけあった。お祭りステージのようなところに、旧蔵の柱が思い出のように使われている。
なぜそれが蔵のものと判ったのかというと、イベントをやるのかオジサンが椅子に座っていたので、聞いてみたのだ。ガラス建築の中には公共の図書館もつくられている。この日は陽射しが強く暑い日だったので「温室」状態になっており、全開のクーラーの音がしてもなお暑さが消えない。直射日光が本を焼いているし、窓際(というか、壁が全部窓なのだ)のテーブルの閲覧者はまぶしそうだ。おそらく冬の暖房費も大変だろう。
見ているうちにこの建築のコッケイさに吹き出してしまいそうになり、しまいに怒りが込み上げてきた。世間ではCO2削減などと騒ぎつつ、環境省の委員会ではガソリンに環境税を上乗せし、その上がりでキレイごとをやるなどと画策しているらしい。しかし、こんなアホ公共建築こそ、CO2の無駄使いの最もたるものではないのか。そして雁坂峠の手間でみた、巨大ダム建設の途方もない税金の無駄使いによって、それらの電力や水は補填されるというわけか。持続可能な木材生産の場はないがしろにされているというのに。狂っている!
重厚な木材と土壁という自然素材でつくられた古い蔵という存在を、なぜ活かせなかったのだろうか? そういえば、今朝、NHKの『生活ホットモーニング』という番組で安藤忠雄の子ども用の公共建築の紹介をやっていた。しかし、このオトコの論理もまったく自己矛盾している。いわき市にできた安藤設計の絵本美術館の前には、コンクリートとガラスの建築ごしに海が見えている。子どもたちは、海に遮断され、オトナたちの用意した絵本を、空調の効いたモダンな部屋で読むのだと。ドアホウ! 海で水中メガネ使って潜って生き物たちと戯れるほうが絶対イイぞ!
コペンをぶっ続けで8時間以上運転したけれど、ぜんぜん疲れない。この内部空間は、狭さよりも喜びが満ちているのだ。若い頃の思い出の八ヶ岳、麦草峠の茅野側は、コペンのオープンドライブが最高に似合うコースだね。