「限界成立本数が日本で最も高い森」と鋸谷さんに教わった魚梁瀬のスギ林を、いちど見ておかねばと思っていた。その森はたしかに凄かった。天然スギといえば荒くれた太い枝が何本も突き出してしる木が多い。しかしここのスギはきれいに枝打ち管理されたように通直完満に、すっくと天に伸びている。そして、たしかに密度が濃い。
中層木の広葉樹が多数入り込んでおり、中には太ももほどの太さに育っているミズメやホオノキ、サカキなどがある。後続の広葉樹は光が制限されるためにひょろ長い樹形に育っている。その雰囲気は、伊勢神宮宮域林にそっくりである。
台風被害でズタズタの四国の中で、ここ魚梁瀬遺伝子保護林は被害がまったく見られない。中層木のあついところは、下草は少なく地面が露出している。しかし腐葉土が厚く堆積している。また、大きな石や地面に伏せた倒木には苔が生えている。治山治水の要(かなめ)は、実はこの中層木の広葉樹にあるのだ。
かつて魚梁瀬杉は林野庁のドル箱であった。ここの営林署長から、林野庁長官に出世した人もいるほどである。宿に杉巨木を輪切りにしたテーブルがあった。その芯の年輪が緻密で、辺材が少なく赤みが多いことに驚かされる(芯の部分の年輪が稠密で、辺材部分が疎になっている)。
宿は魚梁瀬温泉の「満木荘(まんもくそう)」。ムササビの剥製を発見、幸先がいいかも?
ヤナセスギ保護地区の千本山登山口の看板。
ここからは徒歩で。
その保護林の内部。これでもかと大木が林立。広葉樹の中層木が非常に豊か。
林内のスギ以外の木の説明プレート。
樹皮と林床の土。
見上げたところ。空間がある。
林分の調査表。
伐倒株の中から広葉樹が芽生えている。林内を歩く相方。
千本山登山口のコペン。
帰りに馬路村で魚梁瀬杉の資料を購入。ここは柚子の里で売り出している元気な村だ。最近はスギ間伐材をスライスし圧縮加工したものでバッグなどをつくった製品を出して話題になっている。観光客も多かった。地元の努力もすばらしいが、その源流の魚梁瀬杉の存在がこの馬路村を価値あるものにしている。森は最後の砦であり、森が原点なのだ。そこを暗喩的に活かしたことが、馬路村の成功の秘訣のように思える。
ここまで来たらどうしても室戸岬まで行ってみたい。空海が悟りをひらいたという洞窟、蒼く澄み切った海、先端の山上にある寺院。すばらしく高い清らかな波動を持つ岬。ここはやはり特別な場所。白装束のお遍路さんもたくさん集まり、真言を唱えている。
コペンの中から讃岐富士(飯野山)を望む。
瀬戸大橋、与島にて。
今日の宿泊先は岡山の津山の友人、S君のアパートだ。高速に乗り、瀬戸大橋を渡って岡山入り。