「おきりこみ」は翌朝の汁がしみ込んでドロドロになった煮返しが旨い、と聞いていたが、ううむ、たしかに旨い。ほとんどクリームシチューだ。囲炉裏4日目。煙は慣れているけど、灰の飛びがこれほどとは思わなかった。マメに掃除が必要だ。しかし、囲炉裏は薪を超ローコストに使う最も優れた方法であるとの確信を持った。
昨日は相方がカキを取って細かい枯れ枝がたくさん落ちた。カキは枝が折れやすい木である。
その枝を拾い集めて囲炉裏で燃やし、煮炊きに使った。マッキーやちびカマなら、こんな小枝は焚き付けにしかならない。しかし、囲炉裏では立派な戦力として煮炊きに活躍するのである。それは、薪の配置を最も効率良いかたちにできるという利点があるからだ。炉床の灰の上は、自由自在に薪や熾を動かすことができる。灰にくぼみをつけることで炎を上がらせ、灰をかけることで燃え過ぎを防ぐことができる。それには薪の種類や管理や、燃やし方など様々なテクニックがいるのだけれども、それを見極めることができるなら、囲炉裏はおそらくこの地球上で、最もローコスト・ローインパクト、かつ多彩な技を発揮できる調理炉である。
さらに「自在かぎ」がまた便利なのだ。これを上下することで、下の火におかまおいなく煮炊きの火力を調節できる。そしてかたわらに火鉢用のゴトクを置けば、極弱火の保温で湯などを置いておける。自在かぎは網に載せることなく直火が鍋底にあたるので熱効率が良い。薪ストーブでもクッキングタイプのものがあるけれども、それは位置が固定されていて複雑でかさばる。囲炉裏は四角い箱に灰が載っているだけ。シンプルで自由だ。今日はごとくで羽釜ご飯を炊いてみた。ちびカマよりも少ない薪で完璧に炊けた。
囲炉裏はまた、熾き火を利用した蒸し焼きが楽しめる。群馬の山村では「おやき」を囲炉裏の灰の中に埋めて作っていた。おやきとは味噌を練り込んだ小麦粉のせんべい状のものである。僕らはアルミホイルという便利なものがあるのだから、これで様々な蒸し焼きを楽しめる。イタルさんからいただいたサツマイモがあったので、それを灰の中に埋めて「焼き芋」にした。囲炉裏は小さなオーブンにもなるのであった。
シラカシの下にあるモミジが色づき始めた。