畑初めのジャガイモ植え


ようやくイラストマップのラフが終わったので、今日はいよいよジャガイモ植え。まずは堆肥をフルイで振るって分解できていない小枝とか石やゴミをよりわけ、土嚢袋に入れて背負子で運び、畑にまく。畑は昨年秋に豆を収穫してからそのまま放置してあり、菜の花や様々な雑草が出始めているが、僕らはこれを耕さず、除草もジャガイモを植えるところだけ、という徹底自然農で行くことにする。畑の畝のくぼみに堆肥をまいておき、ジャガイモの種芋を土中におさめるときに、手で堆肥をつまんで周囲の土と一緒に埋め戻す。それだけ。種イモは半分に切って切り口に木灰をまぶしておく。

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普通は、まず畑全体を耕耘し、除草して畝を切りなおすのだが、僕らはその手間を省くので作業はうんと早いのだった。はたしてこんなことで大丈夫なのか? この不耕起・未除草で作物が育つほど農業は甘くないのではないか? などと不安もよぎるが、雑草の中を駆け巡る小さなクモや越冬から目覚めたテントウムシに励まされ、作業を続ける。

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昨年と比べて驚くほど土が柔らかくなっている。雑草の根があるためか、畝の頂上に鍬を入れても畝斜面の土が崩れない。したがって、土を山側に持ち上げるという辛い作業からも開放される。不耕起で土の流れを止めたほうがずっと合理的なのに、なぜ山の人はこの方法を採用しなかったのだろうか?

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ネギも雑草と共存させて育てたが、この春には分けつして成長がめざましい。いや、普通のネギからすれば成長が悪い小さなものだけど、それでも育っているし味はすごくいい。地元の人にとって雑草だらけの斜面にネギが立つ姿は「手抜き」と見えるだろうけど、実際にこれで成長しているのだ。

しかし、完全に除草しないかというとそうでもないのだ。夏には野菜を覆うほど雑草が成長するので、あるていど刈り込む作業が何度か必用になる。しかし雑草を根っこごと排除し土をあらわにするということはしない。だから、クモや昆虫や表面の微生物層の生存域は確保される。野鳥も飛び交っている。

他所の畑は作物以外は徹底除草する。雑草が生えてくると畝の斜面を平鍬で引っ掻いて、常に土をあらわにしている。徹底除草した畑は、作物に対して肥料がよく効く。山間部の石の多い水はけの良い斜面の畑では、化学肥料はとくに即効性があるだろう。考えてみると、そのような肥料を使うということが、すでに除草を前提としているということだ。雑草が共存していては、肥料で雑草も大きく成長してしまうからである。

僕らは木質(小枝、落ち葉)系の堆肥と木灰だけを土に入れているが、それは作物の成長のために与えるというよりも、土壌を活性化させるために、という感覚でまいている。すなわち、作物に肥料を効かせるためには除草が必用だし、中途半端な除草をやっていては、かえって手間がかかる(除草は雑草の芽が出た初期に抜いてしまうのが一番簡単なのだ)。だから、農業は徹底除草+施肥という道を進んでいった。

しかし、その畑と僕らの畑とでは、表情がまったくちがう。まず僕らの畑では生き物の数が圧倒的に多い。徹底除草した畑は死んだ表情をしていてまるで工場のような感じがする。平地でみられるプロの畑のほとんどがそうだ。しかし、無農薬有機を標榜している市民菜園が健康的に見えるかというと、そうでもないのだ。そこでは鶏糞牛糞などの畜産業から出た動物糞を大量に使っている場合が多いからだ。遠くからみても、土地から発散されるパワーのようなものがまったくちがうのが感じられる。

もちろん施肥を前提とした品種改良がなされた作物はたくさんあるので、すべての作物が自然農でできるとはいえない。しかし種を探していけば様々な作物ができるはずである。山間部の畑は、同じものを大量に作るには不向きだが、いろんな種類を少しづつ作るのには向いている。標高600mのここは寒暖両方の中庸の場所だし、石垣、沢、樹木に囲まれた傾斜畑は、日照や地温、水はけにいたるまで、様々な条件の場所がある。上手にきりまわしすれば最高に面白い農業ができるはずだ。

僕らの畑では、作業で汗を流していても不快さがなく気持ちがいい。畑と石垣に近くに咲く野草の存在は連続したもので、風景がすばらしく、作物は不揃いで小さいが、味はいい。その「嬉しい」感覚はとても大事なものだ。そのような野菜だけで満足に生きられるなら、豊かな森と清浄な水と分ちがたくつながった、最も環境調和的な農の姿であると思う。

早く上がったので今年の畑初めの記念にワインを開けた。「菜の花の辛子和えには白だよな~」と思ったら赤しかない。そこで思いついたのが「しゃぶしゃぶ」。ちょうど上州牛のスライスと豚バラがあったのだ。ゴマを擂ってソバ用につくっておいた「かえし」にそれを入れて食べる。これが「ウ、ウマイ!」「そっか、水がウマイということは、しゃぶしゃぶも旨くなるってことか!」などと、きちんとお店でしゃぶしゃぶを食べたこともないのいに絶賛しつつ、まだ明るいというのにワインは空に・・・。

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