梅とダイアナ


梅干しにした梅はとても安価だったが、それは「傷梅」だからで、傷がひどいものはやはり梅干しには向かない。それは砂糖漬けにして、その梅シロップを氷水で薄めて楽しんだ。さてその出汁ガラのような梅の果肉、とはいえまだまだ香りも味もある。それを寒天で包んで梅ゼリーをYKが作ってくれた。

さて、最後にタネが残った。梅干しのタネを割って中の仁を食べるのはけっこう好きだ。梅の香りというのは実はこのタネの中の仁から出ているそうで、いわば梅のエッセンスは果肉ではなく仁にあるのだ。

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梅干の仁は塩漬けのせいか萎縮しているが、梅シロップをとったほうは、割ってみるとまるで小さなアーモンドのようなものがコロリと出てくる。酒のつまみにナッツ、とくにアーモンドが大好きな僕はハッ!とした。そうか、アーモンドは梅の近似種(バラ科)なのではあるまいか。ネットで調べてみると(江崎グリコのHPに「アーモンドのおはなし」というコンテンツがあるのでした/笑)やっぱりそうだった。

青梅の種には胃腸の中で青酸に変わる成分が微量に含まれている。昔から「梅は食うとも核(さね)食うな中に天神寝てござる」などと言い、子供たちへの戒めとしていたそうだ。この成分は梅干しになると霧散するのだが、梅酒や砂糖漬けではどうなんだろう?

さらに調べてみると梅の仁にビタミンB17があるとかでこの物質は「ガン細胞に直接攻撃する唯一の天然物質」なんだそうだ。ほんとかな?食べてみるとちょっと薬っぽい香り。生のアーモンドを買うと極まれにツンとした苦味の玉に出会うことがあるが、それにちょっと似ている。が脂っ気はない。漢方にはなるがつまみにはならんな(笑)。

きょうも梅ゼリー(柑橘の皮も入っている)。食べ終わった種を転がしていると、そこへクロヒカゲがやってくる。ササを食べて幼虫が育つこのチョウは、成虫になると花よりも果物臭や樹液を好む。

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羽化したてなのか人なつっこく、手にも足にも止まっていく。ジヤノメチョウ科のチョウらしく、地味ながら蛇の目の紋が鮮やかなインパクトを与える。そのまわりにうっすらと紫色の鱗粉をくまどるのがいい。このチョウ、学名にはdiana(ディアナ・ダイアナ/月の神)と粋な名がつけられている。

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ところで、骨の髄まで味わい尽くした梅の実であるが、殻ゴミはもちろんカマドで炎となり、畑にまかれる灰と化すのである。


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