DIYの雑誌『ドゥーパ!』から取材が来る。古民家の改装の特集号で、わがアトリエの改装具合と暮らしぶりを撮りたいという。んん、だいじょうぶかなぁ、と一瞬躊躇した。古民家の改装といえば、贅をつくして移築改装する完成品の例がよく雑誌に載っているが、
「これってちょっと違うよなぁ」
と、僕らは思っていたのだ。ぱっと見、おしゃれな都会人ウケするような写真ばかりで、当然のことながらたいがいオーナーはお金持ち。一見簡素に見えて、実はかなり贅沢である。
それは下男下女を使った昔の「庄屋様」の暮らし、あるいはヨーロッパ貴族の暮らしに似ている。山に連結し、生活と一体化したものが感じられないのだ。
ところが、山に連結した暮らしを連綿と続けている地元の人は、実際は限りなく都会に近づこうとする暮らしをしている。囲炉裏を封印し、ビニールクロスも合板も使うし、花柄の電化製品に溢れている。絵にならないのだ。
このギャップは見ていて面白いが、互いに学ぶ交差がないように思われる。
さて、神流アトリエの場合は、廃品廃材・貰い物と山からの木材利用で改装費用は限りなくゼロに近い。しかもまだ本格的な改装とよべるものではなく、合板を剥がして土間を復活させたり、必要機材の荷上げなどに相当なエネルギーを使って、そのうえ「とりあえず、どうしても必要なところから」という簡易補修の延長がいまだ続いている。はたして誌面に耐えうるか不安だったが、
「とにかく取材させてください」
と編集者W氏とカメラマン氏が、東京からやって来る。
取材2日前から掃除に慌てる二人であった(笑)。囲炉裏の煙りでちょっと煤け状況だった障子の張り替えをする。
室内は本物の和紙を奮発したが、ここは囲炉裏で始終いぶされるのでホームセンターで買った安物。
入り口の土間の道具類が混乱状態だったのを再び整理整頓。
間伐材のスギとクラフト用に乾燥させておいたツバキの枝を使ってオノ類や背負子の置き場を新設。
「これからは、使った道具は必ず元の場所へおきましょうね」
「ハイ、すいません」
ストーブの煙突も磨きました。すっきりした部屋で笑顔。
カメラマン氏は、炎をたてた囲炉裏を入念に撮っていった。編集者のW氏は、トタン屋根に落ちるドングリの音を良しとする感性の持ち主だった。
古民家改装のツボは、ゴテゴテとしたものを徹底的に取っ払って、自然素材そのものを見せていくことだ。自然素材は磨けば光る。時とともに味わいを増していく。だから掃除が大事なのだが、そのためにも掃除をしやすくする。モノを飾りたてるのは掃除には不都合なのだ。構造材の軸線をしっかり見せ、その美を際立たせるのがいい。内部は古色になっていくが、そのぶん窓からの景色が映える。また切り花の原色を室内に持ち込んでもいい。
で、YKと話した結論。
「お客様や取材がくるたびに、アトリエの改装は進んでいく」
「・・・・」