『未完の建築家 フランンク・ロイド・ライト』を読んだ。ペンギン社のコンパクトな伝記として2004年に刊行されたものの翻訳だそうだ。真実を奥深く分析した最新のライト評伝といってよいだろう。
面白かった。ライトの建築を思いっきりみれる旅をしてみたいものだ! もしアメリカを縦断するなら、
・東部シカゴ周辺の初期住宅建築プレーリーハウス。
・設計の拠点となったウィスコンシンとアリゾナの両タリアセン。
・西部カリフォルニアに点在する古代マヤ・アステカの影響を思わせる超個性的な大邸宅。
・合理的経済的なL字型スタイルを構築したユーソニアンハウスの代表作をいくつか。
・ペンシルベニア、カウフマン邸「落水荘」(ライト住宅の最高傑作といわれる)。
・ジョンソン・ワッックス本社(ウィスコンシン)とグッゲンハイム美術館(ニューヨーク)
必見作品だけでもこれだけある。
これまで、ライトの建築写真集、自伝、評伝、書簡集など、どれほど読んだことだろう。ところが実際空間体験したものといえば明治村に移築された「帝国ホテル」の片割れだけ(それでも凄いものだったが・・・)。先日の屋久島旅の途中で立ち寄った「芦屋のヨドコウ」にはまた振られてしまったし(前の旅のときも休館日だった)。
不思議なことに、ライトの建築には最先端のコンピュータ技術を使ったデザインに酷似する一面があり、ライトはそれをT定規とコンパスと三角定規を使ってやっていたのだ。彼の浮世絵蒐集は商売人の域に達しており、ドローイングにもその影響が明瞭に見て取れる。
日本建築と文化に最も強い影響を受けたというそのことを、ライトがどのように咀嚼し昇華させたか。それを見ることで瞳に浮かび上がる日本の本質と、ライトその人の西洋的(近代的)傲慢さや誤謬を感じてみたい。
石組や漆喰や彫刻・ステンドグラス、そしてアメリカの木造、古き良き職人的手仕事が残っていた時代の肌触りが、ライト建築には残っているはずだ。さらに生涯の1000個以上をデザインしたという暖炉。それらをぜひ体感したいものだ。
ああ、世間はあのおぞましい連休というやつで、くだらない旅の浪費で、排気ガスと汚物をまき散らしいているというのに。