トラさんの薪


近所のご老人Oさん(トラジロウさんという名前なので、今後「トラさん」と書くことにする)からまた薪を貰った(前回の日記)。

作業場に行くとトラさんは大ハンマーとクサビで薪割り中であった。風呂釜をガスに変えてしまったので薪ストーブだけでは薪が使い切れない、というわけで、丹精に薪のサイズを揃えてチェーンソーでカットしていくと、どうしても半端な残りが出る。それを

「オオウチさんが貰ってくれると助かるよ」

というわけである。


トラさんは定年後、山仕事をしばらくしていたらしい。作業場には枝打ちナタが下がっている。

「大工仕事もするんだって?」

「いま囲炉裏部屋つくっているんですよ」

「ああ、ウワサは聞いたよ。いいよなあ、囲炉裏は。オレも大好きなんだ」

「・・・」

「器用なんだなあ、オオウチさんは」

「いやあ、金がないから、人に頼めないだけですよ」

「金なら、オレも無いよ。ははは・・・」

トラさんは囲炉裏を「なつかしいよ・・・」と言い、むかし赤里芋を囲炉裏端で焙烙で焼いた話などを、実に懐かしそうに語った。

「燃し木に貰ったんだけど、いいヒノキの床材があるんだよ。使うかい?」

と見せてもらったのは、なんとヒノキのフローリング材(!喜)。ホンザネ加工と超仕上げ鉋がかかった高級品。変色や節割れが多少あるハネ物のようだが、囲炉裏部屋で使うならぜんぜんOKなのだ。

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「臼にするケヤキがあるんだけど、オオウチさん、自分で臼つくってみるかい?」

なんだかスゴいことになってきた(笑)。桐生で薪の調達をどうしようか・・・と、最初は近所の山に拾いに行っていたのだが、トラさんのおかげで、今年の冬分はこれでなんとかなりそうな勢いである。

囲炉裏が好きな人、囲炉裏が無くなって悔しい思いをしている人は、実はたくさんいるのではないだろうか? そんな老人を、私はこれまでたくさん見てきた。囲炉裏部屋にトラさんが遊びにやって来るのが楽しみだ! と、心で叫びながら、リヤカーでせっせと薪を運んだのだった。

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