恐山、六ヶ所村、三内丸山(7日目、温泉・縄文・原子力)


恐山へ向かうルートは南のむつ市から入るのが一般的で、大きな観光道路も整備されているようだが、北から来た私たちは大畑川沿いに入る。この川と薬研温泉の組み合わせは山釣りファンにとって垂涎の的であったが、今はどうなんだろう?

雨だ。やや南下したので紅葉が残っている。海峡を渡ると林相はがらっと本州になる。途中からヒバが見え始め、ブナが現れる。大畑川流域は確かにすばらしい森だった。峠を過ぎて下り道になる。やがて硫黄の臭いがして、かの地に近づいたこと教えてくれる。

恐山といえばおどろおどろしい荒涼とした光景にイタコの口寄せ・・・というイメージを持っている私は、霊的に敏感なyuiさんがここで感応しやしまいか? と心配であったが、むしろ行きたがったのは彼女のほうであった。横殴りの雨も治まったが、どんよりと曇り空。

早朝着いたこともあり観光客は誰もいない。イタコもいなかった。ここには温泉もあるので6時から見学受付していることは調べておいたのだが、私たちは一番乗りのようだった。入山料は500円。山門を背に。背後は地蔵山。

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1200年前に慈覚大師円仁が開いた霊場であり、中央の湖を中心の八峰の山が取り囲む。また火山ガスの吹き出る岩肌の一帯があり、そこは地獄に、そして湖の白砂の浜は極楽になぞらえられる。北アルプスの立山みたいな感じかな。意外に、悪い濁ったエネルギーの気配はない。むしろ清らかな感じさえする。

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本堂にお参りを済ませてまずは温泉だ。境内に3棟の湯屋が建てられている。1棟は混浴なのだが、参拝路のすぐ近所でもあり、男女別の棟(冷枝の湯、古滝の湯)に入る。内部は総ヒバ造り。熱い湯がトロトロと湯船に注いでいる。そしてヒバの浴槽からゆったりと溢れ出ている。すばらしい!

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強酸性の湯なのでクギはステンレス製だった。熱すぎたので水でうめてからたった一人で湯船を楽しむ。湯の香りとともに、ヒバの香りもたまらない。

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その後、湯上がりのホエホエ気分のまま、地獄極楽めぐりに行く。火山ガスの吹き出る岩肌の一帯に地蔵菩薩や八角堂、などを周遊する徒歩40分のコースだ。石が積まれ、故人の面影を偲ぶ位牌や名前にの書かれた石、それに風車がカラカラとまわる。

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静かだ。小雨が落ちているが、不思議に気分は穏やかで、気持ちがよい。宇曽利湖の白砂一帯はまさしく浄土の清らかさだ。

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帰りに冷えた体をもう一度温めた。宿坊の裏手にある「花染の湯」にまわってみた。こちらはちょうどよい熱さだった。飲泉してみると酸味がなく、苦みがある。わすか数十メートルで湯質が異なるようだった。

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私たちが門を出る頃、大型バスの観光客が来始めていた。「平成のジジババ様」集団の出現で、周囲の空気が激変していくのがわかった。後で調べてみると、7月の祭典頃にはイタコの有料口寄せが並ぶらしい。若手の人気イタコもいたりして、ずいぶん様変わりしているようだ。

下北半島の首の部分を南下する。次の目標は「三内丸山遺跡」である。最短ルートは陸奥湾沿いだが途中で六ヶ所村の原子燃料サイクル施設に寄ってみることにした。近づくにつれて現れたのは風力発電の巨大プロペラ群である。かなりの数で壮観だったが、シベリアから飛んでくるハクチョウたちは大丈夫なのかなと心配にもなった。

施設といっても一般が見学できるの「六ヶ所原燃センター」のみだが、この施設の展示がまるでゲームセンターのようにきらびやかだ。中学生らしき団体が入って来て映画館のようなところへ誘導されていった(洗脳映画を見せられるのかな?)。

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驚いたのは各階受付のお姉さんが化粧ばっちりのスチュワーデスさんみたいだったことだ。車窓からずっと荒涼たる風景を眺めてきたところなので、それがまた鮮やかだった。

敷地の鳥瞰を眺めながら解説してくれた彼女(緑色のアイシャドウをつけている、けっこう美人)に訊いてみた。彼女たちは全員で10数名いて、ちかくの寮から通っている人たちもいるという。

「私は地元出身なんですけど、東京から来ている人もいます」

「でもあなたは津軽の訛りがぜんぜん感じられないな」

「研修で学びますので・・・」

う~む、さすが。動燃もやるなぁ(笑)

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ここには全国の原子炉から核廃棄物が船で運ばれる。それを処理して地下300mに埋めて永久保存するのであるが、それだけではなく、再処理してもう一度プルトニウムを利用しようという「プルサーマル計画」も始動している。こちらは、具体的には加工した前燃料を陸路で茨城県の東海村まで運び、そこで実用化の加工をする。東北自動車道と常磐自動車道はプルトニウム輸送路にもなっていることを明記しておきたい。

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青森市内で昼食を食べて、いよいよ三内丸山遺跡へ。

うう、でかい。

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お隣の掘っ立て茅葺きもこのスケール。

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ところが・・・。なぜか感動が湧いてこない。いろいろ見ているうちに数々の疑問が。あの大きな梁をどうやって載せたのか? そもそも縄文人にあんな大きな家をつくる必要があったのか?

その割りには、個人宅があまりにもお粗末。

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内部が狭いのに柱がやけに太い。なんという居住性の悪さ。これじゃ囲炉裏の煙も抜けまい。

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よくよく説明書きを読んでみると、あの巨大な塔も「遺跡の穴とそれに残存していた炭化処理されたクリ柱のかけら」から想定復元されたものに過ぎず、空想の域を出ていないのだ。

それにしても、遺跡紹介のセンターになっている建物は、やっぱり鉄筋コンクリート打ちっぱなしとガラス建築。笑うなぁ・・・。そして内部は「シアター」に「ギャラリー」に「体験施設」に「観光プラザ(土産物売り場)」とお決まりのコース(東京の企画デベロッパーが大儲け?)。

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しかし、これだけの施設が入園入館無料なのだ。なぜ?

同じ規模でここにかなり似た構成に仕立てている佐賀県の吉野ヶ里遺跡も見たが、そこは400円の入園料をとったはず。

突然、yuiさんがその疑問に答えて言う。

「六ヶ所村から出てるんじゃない?」

スルドイ! そういえば群馬の上野村がダムを造って潤ったお金でガラス建築ができて光通信がいち早く全村普及・・・というのを思い出した。

あっ!

ということは・・・

「原子力の産廃施設」が世界遺産候補の「縄文遺跡」を支えている???

これが私の単なる想像であることを願う。

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コンクリート打ちっぱなし&ガラス建築の中で縄文土器づくりを体験する子供たち・・・か。そして、ここでも本物の火を見ることはなかった。


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