クリス・コナー合掌


学生時代の友人の結婚式へ宮崎へ向かう旅の途上、奈良国立博物館の特別展「運慶快慶とその弟子たち」展を見た。私は35歳。ようやく掛け持ちのアルバイトから脱出し、ネーム入りで様々なイラストの仕事をこなし始めていた。

超安宿をみつけた。キッチュな壁紙、狭い共同風呂。そこはなんと門限があって夜10時にカギを閉めてしまうのである。ひとり奈良の町に繰り出すと、ジャズ・バーがあったのでウィスキーのオンザロックを頼み、クリス・コナーをリクエストする。

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「あんさん、クリスでっか。しぶいでんなぁ」

隣のオヤジがつぶやいた。ジャズボーカルはいろいろ聴いたがクリスが良いな。もちろんLPもCDもたくさん持っている。クリスは3回声が変わる。バードランドの子守唄のときの初期の声、ヴィレッジ・ゲイトのライブ盤の頃の声、そして後半~晩年に再起したときの声(今年、彼女は81歳の生涯を終えた)。

なんといっても中頃の声がすばらしい。ハスキーで妖艶でスリリングで魔的で・・・もうこの頃のクリスの歌は何度聴いてもメロメロになってしまうのだ。というわけで、私は奈良の旅では運慶の大日如来像とともに、クリスの歌声を思い出してしまうのである。

※追記/クリスが亡くなった8月29日は奇しくもマイケル・ジャクソンの誕生日だったそうだ。マイケルが生きていれば51歳。ん? 私と同じ学年だったのかマイケル・・・。


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